2013/11/25
誌面情報 vol40
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/0/d/670m/img_0d13ca1175d8b219493d40db2b394f6d219626.png)
積水ハウス
積水ハウスは、スマートハウスを基軸にした災害対応力の高い住宅の普及に取り組んでいる。同社は東日本大震災直後の2011年8月、太陽光発電、燃料電池、蓄電池の3つの電池を、住宅のエネルギー管理システムのHEMS(ヘムス:Home Energy Management System)で制御する市販住宅を世界で初めて発売、プリウスも受賞歴のある新エネ大賞も受賞した。耐震性の確保にも注力し、東北地方の震災エリアにおける震災後の新築住宅では、同社が独自に開発した制震工法の採用率はほぼ100%という。同社の分譲住宅地では防災訓練などのコミュニティ活動も支援。さらには、宅内における日常生活を快適にする取り組みの一環として、地域の防災情報をリビングに届けるテレビシステムの開発も手がけている。
太陽電池と燃料電池の2つで創エネ
太陽光発電と燃料電池の2つの創エネルギーシステムに蓄電池を合わせた3つの電池をHEMSで制御する積水ハウスの住宅のネーミングは「グリーンファースト・ハイブリッド」。停電時にもエアコンが使えて入浴の温水も確保でき、冷蔵庫や大型テレビ、照明器具が17時間利用できる―が触れ込み。
太陽光発電は、平均約4kWのパネルを屋根に搭載する。同社の太陽光パネルは、国内メーカーと共同開発したオリジナルのもので瓦形状をしており、一般的な太陽光パネルの雰囲気と異なり外見はスマート。年間の総発電量は約4000kWh。平時の余剰電力は売電に向けられ、4人世帯の標準家庭の場合、年間約14~15万円の光熱費削減が期待できるという。4.5kWの太陽光発電の設置コストは175万円(2013年4月同社公表値、補助金含む) 燃料電池は、ガスで給湯と発電を行うエネファームを採用。都市ガス、プロパンガスのどちらにも対応する。プロパンガスは発熱量が高いが、都市ガスに比べて高価なため、ランニングコストが都市ガス並みになる特別な料金プランをガス会社と提携して用意した。プロパンガスは、震災が起きてもガス供給が途絶する可能性が低いため、都市ガスより震災対策上優位とされる。出力は0.75kW。年間総発電量は約2500kWh。年間約5万円の光熱費削減効果が期待できるという。設置コストは約115万円(2013年4月同社公表値、補助金含む)。
蓄電池と電力制御HEMSの役割
3つ目の電池は蓄電池。出力は一般家庭における最大級の8.96kWで鉛式。家庭の電力消費は、朝と夜にピークを迎えるが、太陽電池は夜の電力供給が不可能で、燃料電池の出力も0.75kWと弱い。そこで頼りになるのが大容量の蓄電池というわけだ。
蓄電池にはこのほか、出力4.65kWのリチウム式電池と、電気自動車(EV)と給電装置により、EVの電気を宅内で使えるようにする2タイプも提案している。日産の電気自動車リーフの出力は24kW。同車を満充電にする所要時間は200V充電で8時間。スタンドで急速充電すると20分で約80%充電できるという。
蓄電池と太陽電池、燃料電池と電力会社の電気のやりくりは、電脳システムのHEMSが自動制御する。蓄電池の設置コストは170万円か200万円の2タイプ。HEMSは8万円(共に2013年4月同社公表値、補助金含む)
電力消費の優先順位は、①燃料電池、②太陽電池、③蓄電池、④商用電力―の順。日中の電力消費はできる限り燃料電池で賄い、太陽電池の余剰電力を売電に回す。電力消費の多い夕方からは夜にかけては、太陽電池が発電しないため、蓄電池からの電力供給で購入電力を抑えるとともに、電気が安い深夜に蓄電池に充電し朝の電力ピークに備える。
この4つの電源や家電との電力消費の分配や売電などを自動制御するのがHEMSの大きな役割。HEMSはこのほか、太陽光発電や燃料電池がどれだけ発電しているのか、電力の売り買いの状況をモニターやネット上で確認できる、エネルギーの見える化機能も備えている。同社では、世界初の3電池システムの導入に際し、独自のHEMS開発も行っている。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/8/d/670m/img_8d1d3c2706aacbf261fdd65872c6ff5975249.png)
誌面情報 vol40の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方