河川事務所に相談窓口

次に、工場と民間事業者の浸水対策に役立つ情報について紹介します。2013年の水防法改正をふまえ大規模工場等への支援が始まりました。この改正を受け、主な取り組みとしまして、まず国土交通省の河川事務所の中に相談窓口を設置しました。

この相談窓口において河川や水防に関する民間事業者からの質問を受けています。また経済産業省との協力で、こうした相談窓口を設置していることや、あるいは企業の自衛水防に役立つ情報を各種業界団体に対して紹介しています。さらに日本商工会議所や、全国商工会連合会の協力を得まして、全国の商工会議所等にも説明しています。

企業の自衛水防に役立つ情報や制度を、具体的にいくつか紹介します。国土交通省では河川が決壊した場合にどうなるかといった情報や、洪水予報などを提供しています。国の河川事務所では、災害情報普及支援室を2013年に開設し、大規模工場等の事業所において、浸水防止計画作成や、訓練実施等を行う際には、私どもでできる技術的助言を行っています。

また、2013年より、新たな浸水防止対策の制度が加えられました。大規模工場の浸水防止対策は、まず河川を管理している国または都道府県が、その河川ごとに、浸水が想定される区域を洪水浸水想定区域として指定します。

この浸水想定区域ごとに、市町村は、その浸水想定区域内にある大規模工場をピックアップします。その際には、市町村は条例でどの規模の工場までを対象にするか条例で定めることになっております。

市町村からの照会に対し、大規模工場側がその対象となる旨を申し出て、市町村がその大規模工場を地域防災計画に位置づけます。この位置づけにより市町村は大規模工場に対して洪水予報等の情報を提供します。

一方、大規模工場の管理者は、市町村から提供を受ける洪水予報等を活用して、いざ氾濫が起きたときに工場としてどのような対応を取るのかをまとめ、浸水防止計画の作成や、その計画に基づく訓練、さらには必要に応じて実際に洪水が起きたときにどうやって対応していくかを、しっかり定めるとともに、可能な限り自衛水防組織を設置することになります。

市町村から大規模工場に対して提供する洪水予報ですが、現在国もしくは都道府県は、管理している河川について洪水予報を提供しています。一方で、洪水予報ができるほどには時間的な余裕がない、または比較的規模の小さい河川については、水位周知情報を提供しています。水位周知河川とわれわれは呼んでいますけど、洪水予報が将来の水位予測を出すのに対して、水位周知河川では、あらかじめ定めた水位に達したときに水位到達情報を提供しております。

情報にもとづく対応計画

大規模工場等における浸水防止計画は、市町村から洪水予報を受けてどのように対応していくかを、工場側が自ら考えて計画としてまとめることを求めております。これには法律上、盛り込むべき内容が定められていています。

1点目としては防災体制。これは洪水予報等を受けて、どういう体制で臨むか。2点目が浸水防止のための活動で、浸水が起きたときにどうやってそれを食い止めるかをまとめます。3点目は浸水防止を図るための施設の準備。浸水を防ぐための機材について、どういったものが準備されているかをまとめます。

4点目は教育訓練。浸水を防ぐために職員がどういう行動をとらなければいけないのか。どういうことが効果的なのかを見直すために最低、年に1回は行うことが望まれます。5点目は自衛水防組織。こちらは設置義務はありませんが、設置した場合には、自衛水防組織が行う業務について整理することになっています。

こうした計画に盛り込むべき事項については、国土交通省から「計画作成の手引き」をホームページで提供しています。さらに工場として既に消防計画やBCP計画等で、災害に対する計画を定めていれば、これに洪水などに関わる部分を加えるだけで、法律上の水害対策を満たすことができます。

国土交通省ではハザードマップポータルサイトも運営しております。こちら先ほど説明しました浸水想定区域について、国または自治体がそれぞれの河川ごとに公表しているものを一括にまとめまして、当サイトから簡単にアクセスできるようにしております。

ハザードマップポータルサイトについては、現在洪水だけではなくて、内水ハザードマップとして公表しているものについてもいくつか公表しており、土砂災害ハザードマップについても、常にインターネットで公表しているものについては、こちらのポータルサイトから閲覧できるようにしております。

続いて浸水ナビです。こちらもインターネットで自由に閲覧できるような環境になっています。河川ごとの浸水想定の情報をベースにしており、アクセスすると浸水想定の地図を表示することができます。

国土交通省が提供している制度や情報を知って 国土交通省が提供している制度や情報を知っていただき、ぜひご活用お願いします。

(了)