2020/11/20
講演録
第37代東部方面総監、元陸将
アジアパシフィックイニシアティブ財団上席研究員
ハーバード大学上席研究員
磯部晃一氏

災害や事故、あるいは今回の感染症などへの対応を改善していくためには、検証という作業が不可欠になります。自分たちの対応を振り返り、同じ過ちを繰り返さないようにするためのものです。米陸軍や自衛隊では、日常的な訓練においても、「検証」が重視されているといいます。第37代東部方面総監・元陸将で、現在アジアパシフィックイニシアティブ財団上席研究員の磯部晃一氏に軍隊における検証の方法を伺いました。
(以下、危機管理産業展2020「事例から学ぶ検証の重要性」での講演内容から抜粋して紹介)
米陸軍が実施しているAAR
アメリカ陸軍には、「リーダーのためのAARガイド」(The Leader’s Guide to After Action Reviews)という教範があります。AARというのは、アメリカの陸軍で取り入れられた検証のプロセスです。これによると、AARは「兵士、部隊自らが、訓練中に実際に行動したことを冷静に分析し、練度を向上させるために、訓練実施直後に行う討議」とあります。反省会と言い換えてもいいかもしれません。
日本では「反省会をやるぞ」と言うと、大抵は飲み会になってしまうのですが、米軍では非常に真剣にやっています。米軍との共同訓練を経て、陸上自衛隊もAARというものに、非常に力を入れるようになってきています。具体的には、小さな部隊だと、指揮官が隊員を集めて反省会をするという形なのですが、正式なAARでは訓練をする前に、ファシリテーターやオブザーバーコントローラーが指名されます。彼らは、あらかじめ訓練の目標、部隊の任務、指揮官の意図などをしっかり掌握して、この訓練で何を実現したいのか、何を目指しているのか、どこまで練度を上げたいのかということを把握した上で、訓練全体を通じて部隊に密着しながら行動を記録し、それに基づいて討議を行います。
講演録の他の記事
- トラベルリスクマネジメントの国際規格を解説
- 元ニューヨーク市緊急事態管理局副長官が語る危機管理担当者の役割
- BCMコンサルタントが実務担当者になって分かったこと
- 企業が押さえておくべきワクチン接種の注意点【職域接種編】
- 改善につながる検証ーAfter Action Reviewーの方法
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/16
-
-
ラストワンマイル問題をドローンで解決へBCPの開拓領域に挑む
2025年4月、全国の医療・福祉施設を中心に給食サービスを展開する富士産業株式会社(東京都港区)が、被災地における「ラストワンマイル問題」の解消に向けドローン活用の取り組みを始めた。「食事」は生命活動のインフラであり、非常時においてはより一層重要性が高まる。
2025/09/15
-
-
機能する災害対応の仕組みと態勢を人中心に探究
防災・BCP教育やコンサルティングを行うベンチャー企業のYTCらぼ。NTTグループで企業の災害対応リーダーの育成に携わってきた藤田幸憲氏が独立、起業しました。人と組織をゆるやかにつなげ、互いの情報や知見を共有しながら、いざというとき機能する災害対応態勢を探究する同社の理念、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/09/14
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/09/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方