2018/01/26
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
約半分の自治体は「色弱があっても消防業務に支障がない」
要するに、職業ごとに各事業体の判断に任せるとなっているので、同じ消防士という職種であっても都道府県ごとに解釈が異なっているということです。では、どのように解釈が異なっているかというと、現時点で、消防士になることが可能な49.8%のアンケート結果によると、なぜ可能かということについての理由は、以下のとおりの、とってもあっさりしたものでした。
「色弱があっても消防業務に支障がない」
支障、ないんですね!!!!逆に消防士になることができない地域のアンケート結果の理由付けは多岐にわたっています。合理的根拠があるかどうか、みなさんと一緒にいくつか考えてみます。
主な理由は、以下のようなものだそうです。
・消防ロープが見えないと困るから
・病人の顔色がわからないと困るから
・トリアージタグが識別できないと困るから
・炎の色により燃焼具合を判断する必要があるから
①信号が見えないと困る、運転免許がとれないからという点について
運転免許がないと救急車や消防車を運転できないわけですから、確かに困りそうです。でも、この論拠は、合理性がないのです。なぜなら、色弱者であっても運転免許はとれているからです。信号がみえないのではと心配されるかもしれませんが、信号の色の順序は決まっているので、識別で困ることはないのです。いまでも色弱者は運転免許がとれないという誤解されている方もいるそうですが、そんなことはないと知っておいていただければと思います。
②消防ロープが見えないと困るからという論拠について
消防用ロープ、様々なカラーのものが使用されています。けれども、前回ご紹介したように、見えやすい色を採用することで、ロープ問題は解決しそうです。救助される方も、見えやすい方が安心ということもありますよね!
③病人の顔色がわからないと困るからということについて
病人の顔色が赤みを増したり、青ざめたりという状況が解らないと救急対応が遅れて心配ということがあるのかもしれません。でも、実は医師免許は、色弱の方も取れます。看護師も大丈夫です。消防士だけNGとするなら、より高度な合理的根拠の立証が必要ということになります。
④トリアージタグが識別できないと困るから
トリアージタグには赤や緑が使われています。これが見えにくいとなると困りそうです。しかし、このタグ、厳密な色指定はないのです。赤を、よりみえやすいオレンジに近い色にすると市民の誰にでもみえやすい色になるわけですから、タグのほうを変えた方がよいことになります。実際、防災士や市民のみなさまもトリアージ訓練に参加されていますので。また、必ず、色のところに番号がふっていますし、色の順序も決まっています。とすると、識別は難しくありません。これだけの理由で、消防士になれないとするには合理的根拠はないかなと思われます。
⑤炎の色により燃焼具合を判断する必要があるから
これについては、実際にどこまで識別を重視しているかによることになります。ただ、すでに半数の自治体では、全く支障がないとしています。その地域はどうしているのか気になります。
ということで、いくつか検討しましたが、その他にも理由があるのかもしれません。その場合も、具体的に検討していければいいですね。なにせ、半分は大丈夫ってことなので。また、最初に紹介した横浜市のように、検査を実施していることすら気づいていなかったケースが他にもあるのかもしれません。
消防士というのは、クラレが毎年小学生1年生のこども対象に調査している なりたい職業で、毎年トップ5にランクインする人気職業です。
消防士は、男の子のなりたい職業トップ5にランクインする人気職業!
それだけじゃなく男の子の親がつかせたい職業でも、昨年、6位から5位に人気が上昇したそうです。
こんなに人気で希望者がいるのに、地元では夢をかなえられない・・?そして災害時の連携も考慮にいれるとどうなのか?「一つでも、災害現場での調整事項を減少させるため」(前述 内閣府)みなさまの地域ではどうなっているか、事前に調べて考えていただければと思っています!
みなさまの地域がどうなっているか知りたければ、調査済みの所はこちらにて。理由とともにわかります♪
広域災害前の時間がある時にこそ、みなさまの地域の大切な消防がどうなっているのか、議論が広がればいいなと思っています!
(了)
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方