小此木担当相は改めて権限移譲の意義について説明した

政府は8日、災害救助法の改正案を閣議決定した。同日中にも国会に提出し、開催中の今通常国会での成立を図る。政令指定都市が仮設住宅など費用を負担し被災者救助の実行主体となる代わりに、都道府県から権限を移譲され国と直接協議もできるようにする。成立すれば2019年4月1日付で施行される。

改正案では政令市の中から「救助実施市」を指定。指定を希望する政令市に、仮設住宅整備や被災者への生活必需品の給与といった被災者への対応について、費用を政令市が負担し実行する代わりに都道府県から権限移譲を受ける。指定された政令市は救助費用の財源となる災害救助基金を積み立てておかねばならない。

法案では救助実施市は防災体制や財政状況が整っていることが必要となることを明記。この基準は内閣府令で定められることから、内閣府では法案成立後、基準作りのための検討会を設置し、具体化する計画。現在は宮城県と仙台市、愛知県と名古屋市、兵庫県と神戸市のほか、仮設住宅を供給する業界団体も交えた協議の場を設置しているが、これらも基準作りの検討会に吸収する方針。

また救助実施市に指定されるためには防災体制の基準を満たすことや、法案に内閣総理大臣が対象市の都道府県知事の意見を聴かねばならないとの規定があることから、事実上対象市と都道府県の同意が必要となる。法案ではさらに市区町村相互の連絡調整のほか、資源配分機能といった都道府県の広域調整権も明記する。

2011年の東日本大震災では宮城県と仙台市が仮設住宅の整備の遅れについてお互い責任を追及。2016年の熊本地震でも災害救助の役割分担などで熊本県と熊本市が対立するなど、近年は都道府県と政令市の考えにずれがあり、政令市側から権限移譲を求める声が強まっていた。内閣府ではこの問題の検討会を2016年12月に開設。その結果もふまえ権限移譲を認める方針を示していた。

小此木八郎・防災担当大臣は8日の閣議後の記者会見で、「東日本大震災と熊本地震の教訓から法案を提出することになった」と説明。4月17日に全国知事会議が反対を表明するなど都道府県の対応については「対象市を抱える都道府県は、指定市以外のエリアで責任を持って役割を果たすことで、(業務の)重なりを解消できる。指定についても政令市と都道府県でしっかり話し合われたうえで行う」と説明した。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介