イベント会場に突如現れた迷彩服の人々。これは訓練のもようです。いったい何の? 答えは本文で!

毎年開催されている「危機管理産業展」。防災や防犯をはじめ、危機管理産業に携わる企業・自治体が集まる国内最大規模の展示会です。2021年は10月20日〜22日の3日間、約300社450ブースが東京ビッグサイトに出展しました。私はこれまで多数の防災イベントを取材してきましたが、この展示会を訪れるのは今回が初めて。予想以上に多くの収穫がありました。今回は、普段の「防災やってみよっ!」とは趣向を変え、危機管理産業展で私が注目したブースを紹介します!

まるで映画のワンシーン! 自衛隊の誇るNBC偵察車

会場に足を踏み入れて、まず注目したのは自衛隊のブース。見てください、この迫力! 

会場の一画を、迷彩模様の装甲車が占拠。圧倒されました

まるで映画のワンシーンみたいですよね。この車は自衛隊の「NBC偵察車」。1台7〜10億円もするそうです。すごいのは外観だけではありません。放射線や生物剤、化学剤から身を守りながら外の様子を検知できる機能を備えているんです。先代の車は、福島第一原発の事故があった時、放射線モニタリングに使われたとのこと。さらに遡ると、この車を使っている部隊は、地下鉄サリン事件の時に有毒物質を無毒化する作業で活躍したそうです。

つまり、この車の使命は、安全・安心を守ること。車内の様子は残念ながら非公表ですが、さまざまな機材が搭載されていて、非常時には4人体制で乗り込み、外界の危険物質を検知して分析したり、時には遠隔で監視したりできるそうです。何か異常が見つかれば、隊員たちが除去などの作業を行います。冒頭の写真は、その公開訓練のもようだったんです!

自衛隊で中央特殊武器防護隊の隊長を務める松原泰孝さん。終始優しく説明してくださいました。普段も怒ることはほぼないとか!(※写真撮影の時のみマスクを外しました。他の写真についても同様です)

非常時に活躍できるのは、普段の訓練あってこそ。いくら暑い日でも、本番と同じ数キロある防護装備を身に着けます。防護マスク、フード、上衣、下衣、ブーツ……訓練後、装備を脱ぐと、ブーツの中には汗が溜まっているそう。お話を聞き、日々の安全・安心は自衛隊をはじめ、多くの人々の地道な努力で支えられているのだと実感しました。

うす〜い毛布がたちまち膨らむ!
足立織物の非常用圧縮毛布

次のブースは足立織物。兵庫県の会社です。ここが作っているのは、非常用の圧縮毛布。何がすごいかって、まずはこの動画を観てください!

A4サイズに圧縮された毛布が、包装を開けると、みるみるうちにふんわり膨らんでいく。圧縮されていただけあって手触りはどうなのか気になりましたが、実際触ってみると、ふかふかで優しい触り心地でした。

展示風景。試行錯誤で完成したという毛布の真空圧縮技術のすごさが伝わるでしょうか? 水色・ベージュ・オレンジという各毛布の右が開封前、左が開封後です!

足立織物は、実はもともとハンカチやタオルを扱っていた会社。しかし、東日本大震災を機に、自分たちにできることは何かないだろうかと考えます。まず目をつけたのは、防寒着の色でした。東日本大震災では津波で救助を求めた人たちは、黒やグレーなど、自然に馴染んでしまうような色合いの服を着ていました。もし身につけているものがもっと目立つ色だったら、助かる人が多かったのではないか。また、非常時で心細さを感じていただろう人々に対し、暖かさを届けたかったという気持ちもありました。

ここで生かせるのではないかと思ったのが同社独自の真空圧縮技術。商品であるタオルを真空圧縮し、コンパクトにして送れるよう、特別な技術を自分たちで開発していたのです。ここからコンパクトな蛍光オレンジの非常用圧縮毛布が誕生します。

社長の足立美由希さんと。「普段慣れているものを使うことが災害時の安心感につながる」という持論があるそう。ですから毛布そのものは、普段私たちが使っているものと変わりません!

非常用圧縮毛布の事業は現在、順調に成長し、東京都をはじめとする多くの自治体や民間企業からも採用されているそうです。もちろん、個人で買うことも可能。持ち出し袋の中に入れておくと重宝しそうですね。