無差別徹底検査による隔離措置の是非
コロナ対策から見えてくる日本の危機管理の課題(3)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2021/12/14
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
日本の新型コロナ対策を諸外国と比較して語る際に避けて通れないのがPCR検査であろう。「誰でも、どこでも、何回でも」を合言葉に徹底検査を行った諸外国が感染拡大に苦しみ、当初十分な検査ができなかったうえ検査能力向上後も必要分の検査に留めた日本の感染が世界的に見ても穏やかだった。何が違うのだろうか。
感染症において、早期に感染者を発見し、隔離することで他への感染を抑制する。それが検査の目的である。また同時に、患者の病名を確定診断することで適切な治療を実施することも大きな目的である。検査にはこの両面性が存在する。
まず、後者の確定診断について考察する。
新型コロナは当初、治療薬が存在せず、治療方法も手探りであった。つまり、初期段階において病名が確定したからといって、治療は対処療法でしかないのが実態であった。そして肺炎治療先進国の日本では、CT検査を活用していた。つまり、肺炎に対しての症状快癒を目指した治療が主であり、今でも重症化対応は大きく変わっていない。
そして肺炎の進行の特徴などが徐々に明らかになり、パルスオキシメーターなどによる、悪化を早期に確認する方法も確立していった。
治療という観点で見る限り、日本の対応に問題性は感じられない。検査も、PCR検査はあくまで補助的な位置付けの確認でしかなかった。この観点では、PCR検査体制は必要以上に強化する必要性が低かったといってもよいだろう。
一方で、前者の感染者の隔離による感染拡大抑止の観点ではどうだろう。
日本ではSARSやMERSの被害を免れた影響もあり、PCR検査体制が脆弱で、当初は検査をかなり絞るかたちでしか実施できなかったのは事実である。感染者の隔離措置が不十分であれば、1回目の緊急事態宣言を発出して一定の行動制限を行い、感染拡大抑止を目指す策は致し方なかったのだろう。
しかし、あの時点で諸外国のように徹底検査が行えていたら、どうなっていただろうか。実は筆者は、検査を十分にできなかったことを幸運だったと考えている。この理由の考察に関しては後に譲るとして、徹底検査を実施した欧米が感染抑止できたとは到底思えない状態に陥ったのは現実だ。
中国の徹底検査は、検査目的で一定期間完全隔離したことで感染抑止の効果はあった。しかし、あくまで検査が感染を抑止したのではなく、地域全体の隔離が功を奏したのであり、民主主義国家では到底実施できない策だった。『バイオハザード2』の世界、あの隔離空間に検査対象者を一定期間隔離したに等しいのだから。
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