正の関心度が嘘のリスクを減らす
第90回:嘘と真実を語る失言(2)
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2025/06/30
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
前回のコラムにて、嘘は本来、義務教育レベルの日本語読解能力さえ発揮できればほとんどは騙されないが、それを妨げる二つの原因として、無関心やモチベーション不足によるものと、感情に訴えられて冷静さを失った結果によるものがあることを示した。今回はこの二つの原因ついて、少し突っ込んで語りたい。まずは無関心に関してだ。
皆さんは、養老孟司氏のベストセラー書籍『バカの壁』を覚えているだろうか。同書によると「話せばわかる」は嘘で、同じ入力情報を与えても、受け取る側の反応は天と地ほど違うものになるという。そのうえで、人に与えるインプット情報を「X」、関心度合いを係数「a」で表すと、その情報を得て反応するアウトプット「Y」は、下記の数式で表せるとした。
つまり、人は関心の高い内容の情報にはわずかな入力情報にも大きな反応を示すが、逆にどれほど大きな情報のインプットがあろうとも、関心がなければほとんど反応はない。
無関心というものは、個人の勝手で済ませられない。社会にまん延する問題を野放しにし、企業・組織内の問題を見て見ぬふりしてしまい、結果として容認することにつながる要因となるからだ。無関心ゆえ、問題視するモチベーションも欠落していき、投げやりになり、嘘に対しても薄々気づきながらも嘘に流されてしまう。抗うこともせずに。
この公式自体、社会の問題の真相を突いているが、養老氏自身が想定していなかった領域にも一般論として拡張できることに、筆者は気付いた。仮説として示された公式は、実証と同時に、その拡張性を検証するのも科学の領域である。筆者的には当時、この関心の係数「a」を負の値に拡張した場合の想定に興味がそそられていた。
関心度合いがマイナスというのは、何らかの入力情報に対して、通常とはまったく反対のベクトルの反応が起きることを指す。つまり、嘘の情報に対しての反応は、嘘を積極的に肯定し、拡散する行動になる。逆に真実の情報には、嘘として否定するエネルギーが発信されるのである。
そんなことが本当に起きるのか、と疑問に思うかもしれないが、冷静に現実を見てほしい。少し考えれば嘘とわかることを堂々と、まことしやかに発信し続ける政治家や著名人、インフルエンサーが多いことに気付くのではないだろうか。
それはイデオロギーや思想信条の影響かもしれない。結論ありきで、後付けのこじつけがあからさまで、論理性の欠片も感じないような発言は、ある意味宗教的信念すら感じる。
この構造を認識し、問題から目を逸らさず、是々非々の論理的思考を怠らない以外に、嘘への対処法はないだろう。このことに関心すら持たなければ、自分自身も知らず知らずに嘘をついてしまう事態に陥りかねないのだ。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
今年の夏は大規模停電のリスク大?
今年の夏、東京電力管内を中心に電力不足が懸念されています。需要に対する供給力の余裕を示す「予備率」が1パーセントを切る見通しで、もしそこで突発的な発電所の事故や故障が起きれば予備率はさらに低下、マイナスに陥りかねません。大規模停電のリスクについて、東京電機大学名誉教授の加藤政一氏に聞きました。
2026/02/12
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/02/10
海外危機管理マニュアルの作成が急務
海外に社員を送り出す企業にとって、緊急事態が発生した際の対応体制は必須。どんなに現地に慣れたベテランでも、自分の身を守り切れない事態は起き得ます。ましてや現在は安全保障上の国家対立が深まり、東アジアの緊張も高まっている時代。海外危機管理サービスを手がける安全サポートの有坂錬成代表取締役に、海外進出企業が取り組むべき対策を聞きました。
2026/02/05
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/02/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方