2022/08/28
独自調査
WITHコロナへの移行と課題

リスク対策.comは、新型コロナウイルス第7波感染拡大における各企業の対応状況を把握することを目的に、インターネットによるアンケート調査を実施した。対象はリスク対策.comのメールマガジン購読者(約2万5000人)で、283の回答があり、そのうち、同一企業からの重複回答などを除いた268件を有効回答として分析した。アンケートの実施期間は第7波の感染拡大が続く8月10日~8月19日までの9日間。回答企業の規模は、101人~500人が27.2%で最多。業種は製造業が35.8%で突出して高く、本社所在地も東京都が54.1%で過半を占めた。また、リスクマネジメント部門の設置状況を聞いたところ、全体の45.9%が兼務での担当部門を持ち、専属での担当部門(19%)と合わせると半数を超えた。感染症を想定したBCPの運用状況については、策定済みで定期的に見直している企業が23.5%、策定済みで非定期的に見直している企業が26.9%で、主にリスクマネジメントやBCPに力を入れている企業が本アンケート調査に回答している。

結果は、感染者や濃厚接触者が出た際の会社への報告は、各社とも徹底している様子が顕著に示された一方で、感染が疑われる症状が出た段階での対応や、濃厚接触者には特定されなくても感染者と接触したり、近くにいたことが確認できたケースなどについては、企業によって対応に差があることが分かった。重症化リスクが下がり、感染者数が爆発的に増える中で、これまでのルールでは一律に対応できない場面が増え、各企業とも臨機応変に対応している傾向が浮かび上がった。一方で、感染拡大により事業継続には深刻な影響が出ている状況も示された。
現状は深刻な状況が38.4%
過去の対応に比べ過大も多い
「あなたの組織の事業継続において、現在(第7波)の感染拡大状況はどの程度、深刻か」との質問に対しては、6.3%が「とても深刻」、32.1%が「ある程度深刻」と4割近くが事業継続上、深刻な状況になっていると回答した【グラフ1】。感染や濃厚接触者が相次ぎ、勤務できない社員が増えている状況がうかがえる結果となった。

「第6波までの対応と比べ、第 7 波への対応は、どの程度、課題があると感じているか」との質問に対しても、9%が「とても課題がある」、35.4%が「ある程度課題がある」と回答しており、現場の厳しい対応状況が垣間見えた【グラフ2】。

リスク対策.comでは、新型コロナウイルス感染症がパンデミックに指定される前の2020年1月から企業の対応状況を調査してきたが、3年が経過し、感染症対策のBCPが浸透してきた今も、感染拡大に対して対応に課題に感じる企業が多い傾向は当初と変わらない。実際、今回のアンケート結果を見ても、感染症対策を想定したBCPの運用状況と現状の深刻さ、過去の対応と比べた課題状況をクロス分析しても、有意な差は見られず、BCPの運用状況にかかわらず、多くの企業が対応に課題を感じていることが分かった。
感染者や疑い症状のある従業員への対応
感染者や疑い症状のある従業員への対応に関する質問では、①従業員に一時的な発熱や新型コロナの感染が疑われる症状が出た場合、会社への報告を指導しているか、②一時的な発熱や新型コロナの感染が疑われる症状が出た場合、病院での受診を指導しているか、③一時的な発熱や新型コロナの感染が疑われる症状が出た場合、抗原検査あるいは PCR 検査をするよう指導しているか、の3問について、「1. 指導していない」「2. 推奨している」「3. 指導している」「4. ケースバイケース」の中から、最も当てはまる回答1つを選んでもらった【グラフ3】。

独自調査の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方