写真:AP/アフロ

リスク対策.comは、7月30日に発生したカムチャツカ半島沖地震に伴う大津波警報への企業の対応に関するアンケート調査を実施した。その結果、半数を超える54.2%の企業が、対応において課題を感じていることがわかった。調査は、8月6~20日までの2週間、リスク対策.comのメールマガジン購読者(主に企業の危機管理担当者)を対象に実施し、有効回答数は356件だった。

 アンケート回答者のうち、津波警報が発表された時点で、従業員や顧客が津波警報の対象となった沿岸地域に「いた、またはいた可能性がある」とした企業は71.9%、「いない・不明」は28.1%だった。調査は、従業員や顧客が津波警報の対象となった沿岸地域に「いた、またはいた可能性がある」とした企業グループと、「いない・不明」としたグループの差についても分析した。

アンケートでは、津波警報への対応について、企業としてどの程度、課題を感じたかについて5段階で聞いた。その結果、全体としては「4. 少し課題があった」が38.2%で最多で、「5.大いに課題があった」(16.0%)を足すと、54.2%が課題を感じていた。また、従業員や顧客が津波警報の対象となった沿岸地域に「いた、またはいた可能性がある」とした企業グループでは、44.5%が「4. 少し課題があった」、17.6%が「5. 大いに課題があった」と回答しており、「いない・不明」としたグループより強く課題を感じている傾向が表れた。

 

初動対応として実施した行動については、複数選択で回答を得た。その結果、「従業員に津波警報に関する注意喚起を実施した」が55.9%と最も多く、次いで「沿岸地域や出張中の従業員の安否確認」が30.1%、「警報の対象となった沿岸地域の従業員に避難指示」が32.4%と続いた。

 

具体的に課題となったことを、各項目ごと5段階で評価してもらったところ、最も課題が大きかったのは「警報が長時間続き業務調整などに混乱」(平均値2.65)で、次いで「社内で情報共有すべきか判断に苦慮」(2.58)、「避難対象拠点や従業員の所在が把握できず」(〃)となった。

 

今回の津波警報を踏まえ、今後どのような対策が求められると思うかを、項目ごとに5段階で聞いたところ、「津波の警報レベル別に応じた自社の行動ルールの明文化・見直し」が平均値3.78で最も高く、次いで「警報長期化や夏季避難に備えた暑熱対策」(3.69)となった。

 

回答者の企業規模は、従業員数1001~5000人の企業が27.2%で最多、次いで「101~500人」が18.3%となった。業種は「製造業」が40.4%で突出し高く、本社所在地は「東京都」が48%と大半を占めた。BCPの運用状況については、策定し非定期・定期的に見直している企業が全体の64.9%で、BCPに積極的に取り組んでいる企業が大半を占めた。

カムチャツカ地震に伴う津波警報

7月30日の8時24分にカムチャツカ半島沖で発生した海底地震に伴い、気象庁では8時37分に最大1 メートルの津波が到達するとして津波注意報を発表し、地震発生から1時間25分後の9時40分には、北海道から和歌山県までの太平洋沿岸に最大3 メートルまでの津波が到達する危険性があるとして津波警報に切り替た。津波は10時30分の北海道根室市花咲から日本の各地に順次到達、岩手県久慈市の久慈港では13時52分に1.4メートルを観測した。30日は、兵庫県の柏原で41.2℃を観測するなど、記録的な猛暑日で、国内33府県に熱中症警戒アラートが発出されており、猛烈な暑さの中で、熱中症の疑いで運ばれる人や、車での避難による渋滞などが報告された。また、津波警報が注意報に切り替えられたのは、30日午後8時45分で、津波警報が長期化した際の対応などが課題とされていた。

災害心理に詳しい兵庫県立大学の木村玲欧教授のコメント

今回の調査から、津波警報時には「長時間続く警報への業務調整の混乱」や「従業員の所在確認の難しさ」が大きな課題であることが明らかになりました。企業にとって、警報レベルに応じた細かな行動ルールは実施面でも現実的ではないため、警報レベルに応じた「大まかな対応方針」を明らかにした上で、「現場が状況に応じて判断・行動できる」よう、情報共有や安否確認(所在確認)の仕組みを整理し、酷暑下での避難や顧客対応も柔軟に調整できる体制づくりが重要だと思われます。

BCPリーダーズ9月号では、津波警報に対して、企業が具体的にとった行動を紹介しています(サッポロビール、西友、富士産業ほか)。またリスク対策.PROチーム契約をされている方は、「リスク対策DATA BOX」の「リスク対策独自調査レポート」から本調査報告書をダウンロードいただけます。