事業継続ガイドラインでも安全確保を明記

内閣府は、令和3年4月に企業がBCP策定をする際に参照する「事業継続ガイドライン」を改定した。中央防災会議の下に設置された「令和元年台風第19号等を踏まえた水害・土砂災害からの避難のあり方についてWG」がまとめた報告書を踏まえたもの。同報告書では「災害時の従業員の安全確保策について、あらかじめBCPに記載しておくことが望ましい」と提言していた。これを受け、ガイドラインでは、風水害などの事前に被害を受ける可能性が推察できる事象についてBCPに追記することを推奨。「台風、大雨、大雪などに係る気象警報や公共交通機関の計画運休などの社会における事前対応を踏まえて、被害発生前の予防的な行動の内容や基準についても全体手順表などに記載することが望ましい」とし、例として、安全確保の観点及び交通機関の計画運休等による通勤、退勤の困難への対応のため、計画休業、被災可能性がある店舗等に柔軟な対応を認めること等の伝達、早期の判断によるテレワーク実施、特別休暇制度の推進等による外出抑制対応の決定などが含まれるとしている。

実際、過去の災害では、台風通過の翌日に鉄道の駅に長蛇の列ができるなど、安全対策上の課題が度々指摘されてきた。群衆事故に巻き込まれる危険性や熱中症の危険性などの危険があるばかりか、公共交通機関を使わざるを得ない身体障碍者など要支援者の移動を妨げることにもなる。連休明けには、こうした事態が再び起きないよう、積極的なテレワークへの切り替えが求められる。

一方で、事業停止が難しい業種もある。ライフラインや金融に関わる事業者など、安易に事業を止めることはできない企業は少なくない。こうした事業者が安全に事業を継続できるようにするためにも、無理な移動は控え、社会全体への負荷を減らしていくべきではないか。

周辺環境への影響も考え事業継続・停止の判断を

もう1点、豪雨などの災害時に企業が事業の継続を考える上で重視すべきは、周辺環境への影響だ。2018年7月の西日本豪雨「平成30年7月豪雨」では、岡山県総社市下原地区にあるアルミ工場が爆発事故を起こした。2019年6月29日付け朝日新聞によれば「川の増水により工場に浸水し工場内の高温のアルミニウムが水蒸気爆発を起こした可能性」が疑われている。社長と工場長は、浸水によって爆発する危険性を認識しながら、操業停止を6日夜までに指示しなかったことが爆発事故の原因となった可能性があるという。製鉄所、精錬所、金属溶融や溶解施設などの熱を使う施設では、水蒸気爆発の危険がつきまとう。安易に事業を停止しても急に熱を下げることは難しく、また、多くが24時間稼働の設備が多いことからいったん操業を停止すれば莫大な損失が出る可能性もあり、どの時点で誰がどう事業継続・停止を判断するか、その際どう安全対策を講じるかはしっかり考えておく必要がある。

令和元年佐賀豪雨災害においては、浸水により鉄工所から大量の油が流出した。過去に同じような流出事故があったにも関わらず、防水対策や浸水時の対応計画が明確になっていなかった。このほか、豪雨災害時にLPガス容器が流出するような事例は挙げ出したら枚挙にいとまがない。今回の台風でも、建設用のクレーンが折れ曲がる事故が起きているが、事業を継続するにしても停止するにしても、社員や顧客の安全に加え、周辺環境への影響を十分考え、事前対策と仮に影響が出てしまった場合の対応までをBCPに組み込んでおくべきではないか。