2020/06/22
事例から学ぶ

社会福祉法人海光会(静岡県熱海市)
福祉施設はテレワークの効かない対人サービス。かつ、身体的に弱い立場の高齢者を相手にするだけに、感染予防はいわば「日常」だ。習慣として根付いた対策をさらに強化するというより、課題はむしろ状況変化をとらえた柔軟な対応、それができるだけの備え、そして困難な状況でも事業を回し収益を確保していく仕組みにある。社会福祉法人海光会(静岡県熱海市)は新型コロナウイルス対応で現場がとった行動を、トリガーとともに時系列で記録。これにもとづいて新たな感染症BCPを策定した。「目の前でリアルに起こっていることなので実用性が高い内容となった」と理事長の長谷川みほ氏は話す。
(本文の内容は5月18日取材時点の情報にもとづいています)
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders
社会福祉事業者にとって感染防止は「日常」だ。手洗いや手指の消毒、マスクやガウンの着用は「スタンダードプリコーション(標準予防策)」といわれ、平時でも当たり前の行動。徹底したトレーニングにより、習慣として根付いている。
いつにもまして敏感になる時期が、季節性インフルエンザがはやる11月~4月。介護老人福祉施設「海光園」を運営する海光会も、この時期はいつも以上に予防策を徹底する。外部からのウイルス持ち込みを防ぐため、一部の業者を除き施設への入館を制限。利用者の家族も、みとり以外は直接面会を中止し、オンラインで代替している。
「今年はインフルエンザが下火でホッとした」という理事長の長谷川みほ氏は、2月上旬に一度、入館制限を緩和した。それが再び厳戒態勢に移行したのはわずか1週間後。新型コロナウイルスの流行が危ぶまれたからで「すぐ決断しないと手遅れになると直感した」と振り返る。
感染予防策は従来と変わらない
特別養護老人ホーム80床、ショートステイ20床、ケアハウス15床を運営するほか訪問介護を展開。これらテレワークの効かない対人サービスを、80人のスタッフで担っている。
うち7割のスタッフが勤務する施設サービスは、日頃の対策を徹底し、身を守りながらサービス水準を維持するしかない。独自の「新型インフルエンザ対応マニュアル」は全員に配布していたが、訓練は通常のインフルエンザ止まり。何をどう変えるべきか想像ができなかったが「飛沫・接触感染なので予防対策はインフルエンザと変わらない」と長谷川氏はいう。
求められたのはむしろ、状況変化をとらえた柔軟な対応だ。「過剰にやればよいというものでもない。対策は段階や影響を考えて判断しないと、むやみに制限をかけても別のところにリスクが出る」
https://www.risktaisaku.com/articles/-/33653
※7月7日の危機管理塾は終了しました。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方