社会福祉法人海光会(静岡県熱海市)

福祉施設はテレワークの効かない対人サービス。かつ、身体的に弱い立場の高齢者を相手にするだけに、感染予防はいわば「日常」だ。習慣として根付いた対策をさらに強化するというより、課題はむしろ状況変化をとらえた柔軟な対応、それができるだけの備え、そして困難な状況でも事業を回し収益を確保していく仕組みにある。社会福祉法人海光会(静岡県熱海市)は新型コロナウイルス対応で現場がとった行動を、トリガーとともに時系列で記録。これにもとづいて新たな感染症BCPを策定した。「目の前でリアルに起こっていることなので実用性が高い内容となった」と理事長の長谷川みほ氏は話す。
(本文の内容は5月18日取材時点の情報にもとづいています)

※この記事は「BCPリーダーズvol.3」に掲載したものです。BCPリーダーズについては下記をご覧ください。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders

 

社会福祉事業者にとって感染防止は「日常」だ。手洗いや手指の消毒、マスクやガウンの着用は「スタンダードプリコーション(標準予防策)」といわれ、平時でも当たり前の行動。徹底したトレーニングにより、習慣として根付いている。

いつにもまして敏感になる時期が、季節性インフルエンザがはやる11月~4月。介護老人福祉施設「海光園」を運営する海光会も、この時期はいつも以上に予防策を徹底する。外部からのウイルス持ち込みを防ぐため、一部の業者を除き施設への入館を制限。利用者の家族も、みとり以外は直接面会を中止し、オンラインで代替している。

 

「今年はインフルエンザが下火でホッとした」という理事長の長谷川みほ氏は、2月上旬に一度、入館制限を緩和した。それが再び厳戒態勢に移行したのはわずか1週間後。新型コロナウイルスの流行が危ぶまれたからで「すぐ決断しないと手遅れになると直感した」と振り返る。

感染予防策は従来と変わらない

特別養護老人ホーム80床、ショートステイ20床、ケアハウス15床を運営するほか訪問介護を展開。これらテレワークの効かない対人サービスを、80人のスタッフで担っている。

うち7割のスタッフが勤務する施設サービスは、日頃の対策を徹底し、身を守りながらサービス水準を維持するしかない。独自の「新型インフルエンザ対応マニュアル」は全員に配布していたが、訓練は通常のインフルエンザ止まり。何をどう変えるべきか想像ができなかったが「飛沫・接触感染なので予防対策はインフルエンザと変わらない」と長谷川氏はいう。

求められたのはむしろ、状況変化をとらえた柔軟な対応だ。「過剰にやればよいというものでもない。対策は段階や影響を考えて判断しないと、むやみに制限をかけても別のところにリスクが出る」

7月7日開催の危機管理塾(双方向ウェブセミナー)では、海光会の長谷川みほ氏に、同法人の新型コロナウイルス対応をお話しいただきます。詳しくは下記をご覧ください。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/33653

※7月7日の危機管理塾は終了しました。