2022/09/22
環境・防災・サステナビリティ
シナリオ分析が描き出す将来のリスク
2022 年は、東京証券取引所がプライム市場の上場会社にTCFD 提言に沿った気候変動リスクの情報開示を求めた最初の年にあたる。3月決算の企業をはじめ、多くの企業が開示している。企業のTCFD 開示をサポートし『TCFD 開示の実務ガイドブック―気候変動リスクをどう伝えるか』(中央経済社)の執筆陣の一人でもある、KPMG あずさサステナビリティの鳥井綾子マネージャーに、TCFD 開示の取り組みについて聞いた。
KPMGあずさサステナビリティ マネージャ― 鳥井綾子氏
気候変動リスク開示の動向
Q. 東京証券取引所(東証)がプライム市場に上場する企業にTCFD提言に沿った情報開示を求めるようになりました。現在の動向を教えてください。
2017年にTCFDが「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言・最終報告書」を発表すると、第1陣として気候変動の取り組みが進んでいた企業が先行してTCFDに賛同し、その後2019年に「TCFDコンソーシアム」が設立され、情報開示に取り組む企業が増えました。
ご指摘のように東証がプライム市場にTCFD開示を求めたことで、さらに多くの企業がこの2~3年でTCFD開示を実施しています。
現在の問い合わせは、一通り情報開示まで経験した企業が2周目、3周目の取り組みとしてシナリオ分析を精緻化したいという要望がメインになっています。
Q. TCFD開示が本当に企業価値の上昇につながっているのでしょうか?
例として、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「ESG活動報告」の中で、GPIFが選定したESG指数のパフォーマンスが市場平均をおおむね上回る結果となったと伝えています。よって、ESG対応と株価へのプラス影響は一定程度ありそうです。
一方で、投資家はTCFD提言に沿った情報開示に満足していないのが現状です。理由の一つとして、形式が統一されていないため各社の気候変動リスクや機会、取り組みを比較できないことや、気候変動が与える財務影響の説明が不十分な点が指摘されています。
現在、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)はグローバルで高品質なサステナビリティ報告基準を開発することを目的に、TCFD開示項目をベースにした気候変動の開示基準を策定中です。
これまでは開示をするだけで評価されてきたものが、要求のレベルが上がり、今後はより高いクオリティーの情報が求められるようになってきます。
環境・防災・サステナビリティの他の記事
- 経営層のコミットが強い会社ほどうまく進む
- 環境容量を限界まで使い余力失った社会
おすすめ記事
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方