経済活動上の情報についても国家・国民の安全を守るための取り組みが必要になっている(イメージ:写真AC)

はじめに―セキュリティ・クリアランス―

セキュリティ・クリアランスという言葉を見聞きしたことはおありでしょうか。

まだ一般的には馴染みのない言葉ですが、内閣官房の資料(令和6年1月17日)によると、セキュリティ・クリアランスとは、「国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報に対して、アクセスする必要がある者のうち、情報を漏らすおそれがないという信頼性を確認した者の中で取り扱うとする制度」とされています。

我が国において、このセキュリティ・クリアランスを法制化したのが、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」(以下「SC法」)です。SC法は、以下のような背景の下、令和6年5月10日に成立し、同17日に公布され、本年5月16日から施行されています。

【背景】※SC法1条の目的規定より引用

・国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大

・重要経済基盤に関する情報であって我が国の安全保障を確保するために特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要


※安全保障=外部からの侵略等の脅威に対して国家及び国民の安全を保障すること
SC法が5月16日から施行されている(イメージ:写真AC)

そして、SC法の目的は、(重要経済基盤に関する情報で安全保障上秘匿が必要な情報の)「保護及び活用に関し、重要経済安保情報の指定、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者への重要経済安保情報の提供、重要経済安保情報の取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資すること」(1条)とされています。

このように、なんだか少し近寄り難いような印象のある法律ですが、「重要経済安保情報」を取り扱う事業者にとっては、事業活動への影響が大きいものであるといえますので、その概要を取り上げてご説明したいと思います。