2012/12/17
防災・危機管理ニュース
危機突破内閣の重要施策に
「危機突破内閣」。自民党の安倍晋三総裁は、26日に発足する見通しの新内閣をこう名付けた。
自民党の総合政策集「J-ファイル2012」には、今後、高い確率で発生することが予測される首都直下型や南海トラフの巨大地震に対して、「国民の命を守り抜く防災対策を徹底する」と冒頭に明記されている。
具体的な施策としては、国土強靭化施策として、首都直下地震や東海地震と連動性が指摘されている東南海・南海地震等に備えるため、事前防災、減災の考え方に基づく『国土強靭化基本法案』『南海トラフ巨大地震対策特別措置法案』『首都直下地震対策特別措置法案』を速やかに成立させ、今後10年間で、避難路・津波避難施設や救援体制の整備等の減災対策を強力に推進し、特に、最初の3年間は集中的な取り組みを展開するとしている。加えて、首都機能等の維持・強化及び分散を図るとともに、日本海国土軸など多軸型国土の形成と物流ネットワークの複線化を進め、国土全体の強靭化を図るとする。
これに併せて、経済の建て直しでは、成長のみならず、「企業のBCP(事業継続計画)策定支援」や、本社機能、拠点機能の戦略的地方展開の支援、サイバーセキュリティの強化など、守備も強化する。
BCPでは、従来の被災時の対応を中心とした計画ではなく、「被災を受けなかった場合の被災地に対する支援のための緊急的な生産体制の変更も盛り込むように働きかける」としており、企業単独のBCPから企業連携型のBCPを推進していく考えを強調している。今後、具体的にどのような施策が打ち出されるのかは不明だが、サプライチェーンの強化が1つのキーワードになることは間違いない。
他方、企業へのBCPの浸透は未だ十分とは言えない。特に中小企業のBCPについては10%にすら至らないともいわれる。
国全体の危機管理力を高めるには、企業、国民の協力が不可欠だ。政府が単なる旗振り役となるのではなく、その必要性を中小零細企業、国民一人ひとりまでが認識し、仮にそのためにコストや労力が必要になったとしても、取り組めるだけの社会の仕組みを構築することが不可欠になるだろう。
■企業のBCPの策定支援(J-ファイルより)
東日本大震災によるサプライチェーンの分断を教訓とし、企業が緊急事態に備えたBCP(事業継続計画)を策定し、継続的な改善を行うことに対する支援制度を強化します。
また、従来のBCPは自社が被災した時の対応を中心に定められてきましたが、東日本大震災を教訓として、全国的なサプライチェーンの維持のため、被災を受けなかった場合の被災地に対する支援のための緊急的な生産体制の変更についても、BCPに盛り込むよう働きかけていきます。「企業単独型のBCP」から「企業連携型のBCP」の策定に向け、支援を行っていきます。
なお、策定されたBCPのうち、緊急事態において、被災地に対する自社の緊急支援内容については、日頃から可能な範囲で公開するシステムを構築し、いざという時のために備えます。
※参照資料「J-ファイル2012」 http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
-
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方