運転手不足が懸念される「2024年問題」を目前にしたトラック業界で、運転手の睡眠の質を改善するための取り組みが進んでいる。専用デバイスで睡眠中のデータを計測。就寝時間などの見直しにつなげ、安全運転ができる環境を整備する。
 トラック運転手の勤務時間は全産業平均に比べ2割程度長い。貨物の小口化が進み、配送の頻度も増す中、睡眠不足や健康問題による事故増加が懸念されている。24年4月には運転手の時間外労働時間が年960時間を上限に制限され、業界は人手不足の深刻化やそれに伴う労働環境悪化への対策を迫られている。
 運輸・交通事業を手がける両備ホールディングス(岡山市)は7月中旬、帝人フロンティア(大阪市)と連携し、運転手の睡眠の質改善に向け支援を始めた。睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査受診経験者と新人運転手ら約50人が対象。
 帝人フロンティア提供のデバイスを敷布団に設置し、就寝中の呼吸や心拍、寝返りの数などを計測。収集したデータに基づき、就寝する時間が遅かったり睡眠時間が短かったりした場合、専用アプリが「就寝時間が遅いようです」「寝つきにくいようです」などのメッセージを運転手のスマートフォンに送信する。
 会社側もデータを共有し、社員の睡眠の実態を把握しようとしている。運転手の睡眠時間の確認は自己申告だが、両備ホールディングスの担当者は「睡眠の質がはっきり分かれば、睡眠時間が十分かどうかの確認もスムーズになり、(健康状態についての)会話もしやすくなる」と話す。
 運輸業のハンナ(奈良市)も7月、ヘルステック事業者と、睡眠中のデータを定量的に測る実証実験を始めた。運転手にブレスレット型のウエアラブル端末を装着してもらい、日勤・夜勤の睡眠データを取得して解析。睡眠の質を自動的に判定できる仕組みづくりを目指すという。 
〔写真説明〕就寝中に呼吸の回数や心拍数などのデータを計測するデバイス(右上腕の下)(両備ホールディングス提供)

(ニュース提供元:時事通信社)