日本郵船がチャーターし運航する自動車運搬船が紅海のイエメン沖でイエメン武装組織フーシ派に拿捕(だほ)されたことを受け、中東の周辺海域を物資輸送に利用する海運や製造業などの日本企業に警戒感が広がっている。各社とも状況を注視し、航路変更の必要性などを見極める構えだ。
 「サプライチェーン(供給網)を含め、日本経済に影響を及ぼし得る」。西村康稔経済産業相は拿捕翌日の20日、記者会見で懸念を表明。関係省庁や先進7カ国(G7)各国と連携し船舶航行の安全確保に努める考えを強調した。
 紅海は、スエズ運河を通って欧州と日本などを結び、各国の貨物船が数多く航行する重要な海上輸送ルートだ。日本郵船によると、同社の運航船は今年9月までの1年間で560隻以上、紅海を航行したという。海上保安庁は20日、付近を航行する船舶に注意喚起を促す警報を発出した。
 海運大手幹部の1人は「直ちに影響が出るわけではない」としながらも、航路変更については「見極めながら対応する」と語る。大手自動車メーカー関係者は「こういうことが続けば、欧州向けの輸送などに影響が出てくるかもしれない」と不安を口にした。
 判断を難しくさせているのは、拿捕の背景にフーシ派の反イスラエルの姿勢があるとみられ、金銭目的の海賊行為とは異なる点だ。外務省が外交ルートを通じて解決を模索する中、海運関係者からは「自社だけで勝手なことはできない」との声も聞こえる。アフリカ大陸南端を回って迂回(うかい)すればコスト増が避けられず、日本企業は慎重な対応を迫られている。 
〔写真説明〕紅海を運航する貨物船=21日、サウジアラビア・ジッダ

(ニュース提供元:時事通信社)