【エルサレム時事】イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザで、イスラム組織ハマスへの攻勢を強める中、イスラエルのガラント国防相は8日、ハマスの「崩壊の兆し」が見えると語った。イスラエルのメディアが報じた。具体的な根拠は不明ながら、一定程度ハマスが弱体化したと評価しているもようだ。一方、ハマスは同日、拉致した人質に関して、「ガザ市への残酷な爆撃で多数が死傷した」と発表した。イスラエルの攻撃をけん制する狙いがあるとみられる。
 イスラエル軍は、ガザ北部と南部で戦闘を強化。軍は8日、「ハマスの心臓部」と位置付ける南部の最大都市ハンユニスでの作戦について、「トンネルからトンネルへ、家から家へ。われわれは迅速かつ強力で、焦点を絞った作戦を開始した」と説明した。米ネットメディア「アクシオス」はイスラエル高官の話として、ハンユニスの作戦に3~4週間を要する見通しだと報じた。
 部隊は、ハマス戦闘員や関連施設を捜索し、数十人を殺害。地下トンネルを破壊するとともに、戦闘員の居場所をつかみ地上と空から「正確な攻撃」を加えるよう指示したという。
 こうした中、軍報道官は8日、戦闘員の投降が増えているとの見方を示した。報道官によると、過去48時間で200人以上の「容疑者」を逮捕し、そのうち数十人をイスラエル領内で取り調べている。中にはハマスの司令官も含まれるという。
 一方、イスラエル軍が7日夜から8日未明にかけて行った人質救出作戦は失敗したもようだ。軍は、兵士2人が重傷を負ったものの、拉致や拘束に関わった戦闘員を多数殺害したと発表。しかし、軍報道官は「作戦で人質は救出しなかった」と認めた。ハマスはイスラエル軍の発表に先立ち、同軍の人質奪還作戦を「阻止した」と主張していた。
 AFP通信は9日、ガザ保健当局の話として、ハンユニスへの空爆で6人が死亡し、対エジプト境界のラファに対する別の攻撃で5人が命を落としたと報じた。 
〔写真説明〕9日、パレスチナ自治区ガザ南部のハンユニスで、イスラエル軍の攻撃後に建物の消火に当たる消防隊員(ロイター時事)

(ニュース提供元:時事通信社)