日本とサウジアラビア両政府が、電気自動車(EV)や蓄電池など脱炭素製品の製造に不可欠な重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化に向け、協力覚書を交わす方向で調整していることが15日、分かった。日本は豊富な投資力を持つサウジと連携してアフリカなどでの鉱山開発を加速し、脱炭素化と経済安全保障の強化を目指す。
 経済産業省とサウジの産業鉱物資源省が、今月下旬にも覚書に署名する見通し。政府が出資するエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、世界中の鉱山への投資を目指して設立されたサウジの「マナラ・ミネラルズ・インベストメント・カンパニー」との覚書を交わす。政府による支援を背景に民間の資金を呼び込む狙い。
 岸田文雄首相は7月、サウジを含む中東諸国を歴訪し、中東地域を重要鉱物や水素・アンモニアなど新エネルギーの供給拠点とする「グローバル・グリーン・エネルギー・ハブ構想」を提唱した。構想は、石油に依存した経済構造の転換を目指す中東地域と、エネルギーの安定供給の確保や脱炭素技術の提供による経済成長を狙う日本の、双方のニーズを一致させたもので、今回の連携は構想具体化の第一歩となる。
 日本は、重要鉱物のほぼ全量を輸入に頼る。重要鉱物は限られた地域に偏在するほか、製錬などの中間工程では中国が圧倒的な世界シェアを握る。サウジのほか、鉱物資源が豊富なアフリカや中南米などへの投資を加速させることで供給網を再構築し、経済安全保障の確保を図る。 

(ニュース提供元:時事通信社)