【ニューデリー時事】パキスタンで8日行われた国民議会(下院、定数336)選挙で、与野党がいずれも「勝利」を宣言し、混乱が広がっている。双方がそれぞれ新政権樹立を主張する構えで、誰が首相となり国のかじ取りを担うのかは見通せない。
 「30議席差がついているにもかかわらず勝利演説したナワズ・シャリフは卑しい人間だ。国民は受け入れないだろう」。最大野党パキスタン正義運動(PTI)が9日公開した動画の中で、同党設立者カーン元首相は与党トップをそう批判した。カーン氏は汚職の罪で収監中。声は人工知能(AI)を活用して合成したという。
 選管は11日午後(日本時間同)、小選挙区の最終集計結果を公表。獲得議席数は、PTI系が候補の大半を占める無所属が101、与党イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)が75、故ベナジル・ブット元首相の息子ビラワル氏が率いるパキスタン人民党(PPP)が54などとなった。選管は、投票用紙の盗難といった問題があった一部の投票所で再投票を命じた。
 実質的にPTIが最大勢力となったものの、公式の政党として第1党になったのはPML―Nだったことが混乱の要因だ。
 PTIは今回、党内の手続き上の問題を理由に選管から政党としての参加を認められなかった。PTIは同国で絶大な力を握る軍と対立。選管の決定には、軍や軍と比較的近い与党からの圧力があったとみられている。
 現地からの報道によれば、PML―NはPPPと連立政権を樹立することで合意。PTI系ではない無所属候補数人が当選後にPML―Nへの加入を表明するなど、多数派工作も活発化しているもようだ。一方、PTIの幹部も「憲法と法律に従って政府を発足させる」と述べた。
 小選挙区の結果に応じて政党に振り分けられる女性や非イスラム教徒の特別枠があり、与党は議席を積み増す見通し。 
〔写真説明〕パキスタンのナワズ・シャリフ元首相=9日、東部ラホール(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)