能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市で、倒壊する家屋や押し寄せる津波、避難する人々の様子が、高齢者施設の送迎車のドライブレコーダーに記録されていた。施設を運営する同市の社会福祉法人「長寿会」の担当者は「減災に役立ててほしい」と話している。
 送迎車にはデイサービスを利用する80〜90代の高齢男女6人が乗り、当時職員だった女性が運転。映像には、午後4時10分の発生直後から車が左右に激しく揺れる様子や、地面が波打ち、次々と倒壊していく家屋が映っている。利用者の「ぎゃー」「なんじゃこれ」との悲鳴も録音されていた。
 揺れが収まると、津波警報が鳴り出した。倒壊した家屋などで道がふさがれ、女性は「津波来るかもしれん」「降りな駄目や」と、車を降りて避難するよう促す。利用者は歩いて移動を始めたが、自力歩行が難しく、近隣住民とみられる男性におんぶしてもらって逃げた人もいた。
 録音・録画はいったん止まったものの、約30分後に自動で再開。無人の送迎車が、他の車やがれきと共に濁流に流されていく様子が映っていた。
 長寿会の高堂泰孝事務局次長(50)によると、利用者らは高台にある同会の施設まで逃げ、無事だった。運転していた女性は「今までの地震と違い、大きく長く揺れていたので、逃げないといけないと思った」と話したという。
 高堂さんは「衝撃的で、改めて地震の怖さを実感した。耐震化や避難訓練など、地域の減災の取り組みに生かしてほしい」と願った。 
〔写真説明〕能登半島地震の津波による濁流=1月1日午後、石川県珠洲市(社会福祉法人「長寿会」提供のドライブレコーダーより)
〔写真説明〕能登半島地震を受け、助け合いながら避難する施設利用者や住民ら=1月1日午後、石川県珠洲市(社会福祉法人「長寿会」提供のドライブレコーダーより)
〔写真説明〕能登半島地震の揺れで倒壊する家屋=1月1日午後、石川県珠洲市(社会福祉法人「長寿会」提供のドライブレコーダーより)

(ニュース提供元:時事通信社)