日銀がマイナス金利解除を決めた。日銀が抑え込んできた長期金利が上昇基調を強めれば、国の借金に当たる国債の利払い費が増え、先進国で最悪の水準にある日本の財政状況は厳しさを増す。超低金利下で借金を重ねてきた放漫な財政運営は転換点を迎える。
 政府は2024年度一般会計予算案で、国債の償還や利払いに充てる国債費を過去最大の27兆90億円とした。予算総額に占める割合は約24%。金利上昇を背景に、利払い費は27年度に15.3兆円と、24年度比で約1.6倍に増える見通しだ。
 新型コロナ対策で借金を積み増したため、国と地方の債務残高は1200兆円を超える。政府は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を25年度に黒字化する目標を掲げるが、内閣府の試算によると、25年度に1.3%の実質成長率を実現しても1.1兆円の赤字になる。
 岸田文雄首相は「歳出改革の継続などで25年度のPB黒字化が視野に入る」と強調する。だが、現行の目標は国債利払い費を考慮していない。24年は中長期の財政健全化目標を本格議論する節目の年に当たり、財務省からは「膨らむ利払い費を含めて財政健全化を図れなければ、市場の信認を失いかねない」との懸念も出る。
 少子高齢化や防衛力強化、自然災害に備えるためにも安定的に財源を確保する必要性が高まっており、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)分科会の増田寛也会長代理は「今後は経済環境、金融政策、金利の動向も十分注意していかなければならない」と警鐘を鳴らしている。 
〔写真説明〕財務省の庁舎=東京・霞が関

(ニュース提供元:時事通信社)