昨年7月に九州北部で記録的な大雨となった際、積乱雲内で落下する雨粒が合体を重ねて大きく成長した後、高度約1.5キロで大小の雨粒に分裂し始めたことが分かった。気象庁気象研究所の研究チームが高性能なレーダーで観測した成果で、猛烈な雨のメカニズム解明と短期的な雨量予測の精度向上に役立つと期待される。日本気象学会がオンラインで開く春季大会で22日に発表される。
 昨年7月10日、対馬海峡などに延びる梅雨前線に向かって大量の水蒸気が流れ込み、福岡、佐賀、大分各県で積乱雲が連なる線状降水帯が発生。福岡と大分の一部に特別警報が出された。
 雨粒の大きさや数、落下速度は、地上ではレーザー光を利用した装置で観測できるが、積乱雲で形成された雨粒が落下中に変化する過程は解明が進んでいない。気象研の鵜沼昂研究官らは、福岡・佐賀両県境の脊振山で2021年に運用が始まった高性能な「二重偏波レーダー」で雨粒を観測し、熊本市内の地上観測データと組み合わせて解析した。
 その結果、高度約5キロから約1.5キロまでは雨粒が合体を重ねて2ミリ超まで大きくなる一方、雨粒の数は減少することが判明。その後、地上に落下するまでは分裂して大小の雨粒が混在するようになり、数は増えることが分かった。 

(ニュース提供元:時事通信社)