2024/11/30
防災・危機管理ニュース
【ロンドン時事】欧州連合(EU)の執行機関に当たる欧州委員会は1日、フォンデアライエン委員長率いる2期目の新体制が始動する。1期目ではコロナ禍やウクライナ危機への対応で指導力を発揮したフォンデアライエン氏だが、国際協調に後ろ向きなトランプ氏の米大統領就任で、一段と難しいかじ取りを迫られる可能性がある。
「われわれはウクライナを支え続ける」。フォンデアライエン氏は11月27日、新体制の承認投票を前に欧州議会で演説し、ロシアの侵攻が続くウクライナを支援する立場は揺るがないと強調。侵攻の長期化で加盟国の間に「支援疲れ」も見られる中、EUの結束を内外にアピールした。
新体制の外交安全保障上級代表(外相)には、旧ソ連を構成したバルト3国の一つ、エストニアのカラス前首相が就任。ロシアに精通し、ウクライナ支援に積極的なカラス氏の起用は、フォンデアライエン氏が2期目でもウクライナ問題に最優先に取り組むことを示唆している。
一方、議会演説では経済の課題にも多くの時間が割かれた。フォンデアライエン氏の要請でイタリアのドラギ前首相(欧州中央銀行=ECB=前総裁)がまとめた報告書の提言を基に、競争力の強化に向け、脱炭素化やデジタル化、人材育成などの重要性を指摘。米中二大国との格差を埋めるため、欧州経済の底上げが必要だと訴えた。
EUのあらゆる課題のカギを握るのが米国との関係だ。ウクライナ支援や気候変動対策などで協調できたバイデン政権と異なり、「米国第一」を掲げるトランプ氏とは貿易や安全保障分野で利害が対立する公算が大きい。EU内でもトランプ氏との距離感に温度差がある中、新たにEU大統領に就任するポルトガルのコスタ前首相と連携しつつ、フォンデアライエン氏が米国から協力を引き出せるかどうかが2期目の成否を左右しそうだ。
〔写真説明〕演説する欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長=27日、フランス北東部ストラスブール(EPA時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

- keyword
- EU
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方