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災害時に困るトイレの話
第3回 浸水時のトイレ対応
気象庁は、令和元年8月28日05時53分「記録的な大雨に関する九州北部地方(山口県を含む)気象情報 第8号」として、佐賀県南部、佐賀県北部、福岡県筑後地方、長崎県北部、五島に大雨特別警報を発表しました。 昨年は、「平成30年7月豪雨」が西日本地域に甚大な被害をもたらしましたが、次から次に起こる災害によって、過去の災害の記憶が上書きされていくことを恐ろしく感じています。ですが、恐れているだけではいけません。現場から学び備えに変えていくことが必要です。 そこで、今回は浸水時のトイレ対応について説明します。
2019/09/02
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危機管理の神髄
十分大きくも早くもなれない
クライシスは慎重で几帳面である。知力と体力を蓄えて、ユニークな混沌とした混合物を構築して時を待つ。そしてまさにそのとき、恐るべき武器であり、われわれがサージ(大波)と呼ぶ衝撃の雪崩を解き放つ。あらゆることーわれわれが起きてほしいと望むこと以外のあらゆることーが一度に発生する。
2019/08/23
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災害時に困るトイレの話
第2回 トイレ問題は命にかかわります
前回の記事では、「水洗トイレはシステムであること」「トイレは、備えや支援から抜け落ちること」「排泄は待ったなしであること」を書きました。 簡単にまとめると、大きな地震や水害のときは水洗トイレが使えなくなります。ですが、発災後6時間以内に約7割の人がトイレに行きます。トイレの備えがなければ、トイレが大小便で一杯になり劣悪な衛生状態となります、という話でした。 もちろん劣悪なトイレは超不快なので、それだけでも問題なのですが、そこが問題の本質ではないのです。先に結論を言うと、トイレ問題は命にかかわります。トイレ問題が引き起こす2つの深刻な事態とは「一人一人の健康被害」と「集団での感染症」です。いずれも関連死につながる重大な課題として認識すべきです
2019/08/02
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危機管理の神髄
パラレルな宇宙を旅してみよう
我々の秩序のある合理的なときもある世界と異なり、パラレルな世界では混沌と混乱が支配している。通常の論理のルールは、因果関係といった基本的なものでさえ、適用されない。あまりにも奇妙な場所なので描写することもできない。行って自分で見るほうが良い。 現実の災害はメッシーなので、われわれはこれをシミュレーションによって行うのが一般的である。可能な限り精細なカラフルな災害現場あるいはシナリオを想像してみる。今それをしてみよう。まずは思考の実験である。一瞬自分のことを考えてみる。来月、今日から4週間のカレンダーはどうなっているだろうか?
2019/07/30
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危機管理の神髄
パラレルな宇宙~大災害の本質
激しい振動があなたを快眠から揺さぶり起こす。あなたは目を開ける。真っ暗闇で全く音はしないがまだ寝室にいる。突然マットレスが持ち上げられて波のように揺れ動く。あなたを揺すぶって起こした狂人が戻ってくる。あなたのベッドの下でこれぞとばかり激しく蹴って突き上げる。雷鳴とポップコーンのはじける音と、花火の音の全てが同時に来たような騒音で耳がふさがれる。れんがのビルを擦り合わせているような擦過音もする。しばらくすると揺れは収まりベッドから落ちる。寝室は前後に、激しく揺さぶられておりランプや写真が棚から落下して壊れるのを聞く。
2019/07/26
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災害時に困るトイレの話
第1回 災害時に水洗トイレは使えなくなる?
皆さん、水洗トイレの仕組みを考えたことがありますか? 私たちの暮らしの根幹を支えているライフラインの1つが「水洗トイレ」です。日々、目にするのは便器部分のみなので、水洗トイレとは便器である、なんて思ってしまいますよね。しかも、ボタンを押すだけで大小便を目の前から流し去ってくれるので、まるで魔法の器です。 ですが、そんな魔法は存在しません。当然ですよね。 水洗トイレの機能を確保するためには、洗浄水を確保するための給水設備、大小便を運ぶための排水設備、そして適切に処理するための下水道施設や浄化槽が必要です。また、これらの設備や施設を稼働するための電力設備も必要です。 つまり、水洗トイレはシステムとして理解する必要があります。もっと言うと、水洗トイレは大小便を水を用いて運び、適切に処理するシステムなのです。
2019/07/22
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危機管理の神髄
世界は狂った
鉄のカーテンの両側で政治家と将軍たちは、もし、相手側がこちらを皆殺しにするなら、相手側も皆殺しにすると保証した。つまり、われわれは人間を抹殺することに同意することで、人間性を維持するのである。 ルイス・ラプハン 「化石の森」
2019/07/12
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危機管理の神髄
すべての災害の母
未来を垣間見ることができれば、どうだろうか。 もし、全ての起こるかもしれない災害と、それがもたらす全ての悪いことを見ることができたら、どうだろうか。ハリケーンによる大洪水、地震で倒壊した建物、停電でスーパーマーケットの空っぽの陳列台や凍える住宅、バイオテロ攻撃の死者など、それらの全ての悪いことを足し合わせてみる。それは、どのように見えるだろうか。
2019/06/28
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安心、それが最大の敵だ
災害列島日本、平成は大災害が多発
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし。…」。言うまでもなく「方丈記」(鴨長明)の冒頭部分である。鎌倉初期の名だたる随筆であり、人生の無常観を活写した文学作品として知らない人はいない。この著名な作品は、また傑出した「災害文学」とも言えるもので、同時代の都・京都を襲った地震・風水害・火災を活写してやまない。生き地獄とも言える描写も少なくないのである。
2019/06/24
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危機管理の神髄
Shit happens -最悪の事態も起きるー
9.11の後、インテリジェンス・コミュニティ(政府が設置している情報機関によって組織されている機関)では攻撃が差し迫っているということが多くの人の目に明らかだった。ハリケーン・カトリーナの後、ニューオーリンズのインフラの強化が大幅に遅れていることもよく知られていた。 ナシーム・ニコラス・タレブ(ブラックスワンの著者)によれば、ブラックスワンはきっかけとなるインシデント(出来事)、あるいは一連のインシデントの産物なのだと説明するのは、偶然にだまされているのである。事後でさえ大災害の原因を理解できると考えるのはばかげている。結局のところ科学者たちは、相当の努力をしたにも関わらず、地震やテロ攻撃のタイミングを正確に予想することはできなかった。大災害の原因を突き止めるというのは大体において後付けの試みである。
2019/06/14
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危機管理の神髄
想像上の友人 人間のもろさ
我々は何度も同じ問題に直面した。受け身の抵抗、曖昧、そして無視である。我々は人が何を言うか、それをいつ言うかが分かるまでになった。奇妙に思うかもしれないが、この現象を説明するために想像上の友人を作ることにした。その名はブルースである。
2019/05/31
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危機管理の神髄
希望が煉瓦壁になる 我々は自らの脆さを忘れがちである
ベッドからはい出して床に倒れたとき肌に分厚い煙が押し付けられるのを感じる。できるだけ床に近くいるのがよいと誰かが言っていたことを思い出す。しかしそこに救いはない。熱と酸素不足があなたの心臓をどきどきとさせる。希望は遠のいていき、もう終わりだと悟る。意識を失いつつあるとき、遠く家のもう一方の端で、煙感知器がピッチの高い音を出すのを聞く。近くの煙感知器用に買っておいた新品の電池が使用されないで台所のカウンターにある。あなたの命を救ったかもしれない電池であるが交換されることにはならなかったものである。
2019/05/17
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首都圏における津波被害を考える
首都圏に本社を置く企業などから、巨大地震が発生した際の津波被害について、どう備えればいいのか、不安の声が上がっている。現在、首都圏における津波被害想定としては、東京都が1703年の元禄関東地震が起きた場合を最悪のシナリオとし、23区内では最大2.61メートルの津波高になると試算している。一方、神奈川県では、1605年の慶長地震が起きた場合を最悪のシナリオとし、横須賀市で9.2メートル、横浜市4.4メートル、川崎市3.5メートルと想定するなど自治体によって被害想定には大きな差がある。想定される被害や必要な対策についてどう考えればいいのか、東北大学災害科学国際研究所所長の今村文彦氏に聞いた。
2019/05/13
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危機管理の神髄
重要なインフラ サイバー脅威
電力・病院・サプライチェーン・通信・小売店・公共輸送・銀行といった重要なインフラからなるすべてのシステムに共通していることがある。ワールド・ワイド・ウェブとして知られる危険な荒れ野に融合されていることである
2019/04/26
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危機管理の神髄
最重要なインフラー電力
重要なインフラのリスクと言えば電力である。電力はいわゆる本源的入力であり、それがなければ何も動かない。 日々の生活を可能にする電気は発電・送電・配電設備の膨大なネットワークによって供給される。全国高圧送電線網として知られるものであり、複雑になりもろくなる一方である。 老化がある。送電線と変圧器の70%は少なくとも25年を経ている。
2019/04/12
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危機管理の神髄
リスクの強烈さ 大災害、高まる脆弱性
「ようこそ、世界の交差点へ」 路線①の電車がタイムズスクエア地下鉄駅へ入線してくると何十年来使い古されたスピーカーから車掌の大きなよく聞こえる音声が流れる。ニューヨーク、それは金融・テクノロジー・アート・ファッションの国際センターである。ハドソン湾とイーストリバーが合流して大西洋に注ぐところにできた広大な自然の港を取り囲んでいる。エンパイアステート・ビル、セントラルパーク、そしてタイムズスクエアのネオンなどを見に訪れる観光客は毎年6000万人にのぼる。それは眠らない都市である。しかし、そこで暮らす850万人の住民にとっては、ビッグアップルのバイタリティには、日常の仕事をやっていくうえで不都合な点もある。
2019/03/29
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昆正和のBCP研究室
第2回:「災害は増えている」はフェイクか?
数年前、アマゾンのサイトで「地球温暖化」をテーマとする本を探していたところ、「地球温暖化なんてうそである」という主張の本が人気ランキング上位にずらりと並んでいるのを見てあ然としたことがあった。今でこそある程度バランスのとれた本が並んではいるが…。
2019/03/20
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もしも大災害で社員が被災したら?
被災するという現実
大きな自然災害で「被災する」とどうなるのかをイメージしてみましょう。倒壊した建物、寸断した道路や橋、停止した交通網、断絶した通信インフラ…。誰でも真っ先にそのような目に見える住宅や街の被災した光景を思い描くでしょう。でも、その被災地となった街には、そこに住み、仕事をしていた、「人」がいたはずです。それはあなたの会社の社員かもしれませんし、あるいはあなた自身かもしれません。
2019/02/27
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日赤、平成の災害を振り返る展示
日本赤十字社は19日、東京都港区の本社内にある赤十字情報プラザにおいて「平成の災害と赤十字」と題した展示会を開始した。3月29日まで開催。東日本大震災や阪神・淡路大震災、熊本地震といった平成に起こった災害についての展示を行っている。同日にはトークセッションも開催。日本赤十字社救護・福祉部次長兼地域包括ケア推進室長の白土直樹氏や神戸市にある阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター主任研究員の菅野拓氏らが登壇した。
2019/02/19
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被災を前提にした災害への備え
落雪など雪の後の雨が怖い
暖冬少雪の今年、筆者の住む新潟長岡は例年1mを越える雪の壁に覆われるのが、今年はこれまで10cm程度。あとひと月この気候が続けば春の便りも近そうである。
2019/01/31
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災害時に電力会社サイトコピーし誘導
ヤフーは地方自治体などと災害協定を締結し、情報発信に注力している。11月19日に、主要電力会社で構成する電気事業連合会(以下、電事連)と、同様の協定を民間と初めて締結した。災害時に各電力会社のホームページのキャッシュサイトを開設し、停電など円滑な情報発信を図る。
2018/12/26
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被災市区町村にドローン無料貸出
ドローンのレンタルサービス「ドロサツ!!」を手掛けるDrone supply & control(ドローン サプライ アンド コントロール、東京都千代田区)は、地震や台風などの災害で被害を受けた市区町村への災害支援として、無料でドローンを貸し出す活動を1日から開始した。
2018/11/06
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豪雨の中、要支援者や地域住民の安全を確保
7月の西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県で、河川の洪水や土砂災害に備えて、早くから防災活動に取り組んできた社会福祉法人がある。7月豪雨では、大きな被害にこそ遭わなかったが、防災マニュアルに基づき、降雨量や河川の水位、ダムの放水量などをこまめにチェックし、早期に低層階にいる入所者を高層階に避難させ、また、地域住民や高齢者・障害者も受け入れるなどの対応をした。
2018/10/05
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安心、それが最大の敵だ
避難指示を受け取る側に立った情報提供のあり方
毎年のように日本列島を襲う水害・土石流・地震などの災害時における避難勧告や避難指示のあり方がクローズアップされている。災害時に、地元自治体などが発する勧告・指示が地域住民に適切に(タイムリーに)伝わっているのか、疑問視する声も聴く。同時に、勧告・指示を受けた地元住民が避難しようとしない「勧告無視・避難拒否」も重大な社会問題になっている。
2018/09/18
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そのボランティア活動、被災者のために有効か
「そのボランティア活動は本当に有効性が検証されたものなのか?と思うことがよくあります。あらゆるものの判断基準が情緒的で、正面から議論できない雰囲気になっているんです」と指摘するのは、神奈川県川崎市在住の高田昭彦さん(54)。
2018/09/14