写真 Shutterstock

「ようこそ、世界の交差点へ」

路線①の電車がタイムズスクエア地下鉄駅へ入線してくると何十年来使い古されたスピーカーから車掌の大きなよく聞こえる音声が流れる。ニューヨーク、それは金融・テクノロジー・アート・ファッションの国際センターである。ハドソン湾とイーストリバーが合流して大西洋に注ぐところにできた広大な自然の港を取り囲んでいる。エンパイアステート・ビル、セントラルパーク、そしてタイムズスクエアのネオンなどを見に訪れる観光客は毎年6000万人にのぼる。それは眠らない都市である。しかし、そこで暮らす850万人の住民にとっては、ビッグアップルのバイタリティには、日常の仕事をやっていくうえで不都合な点もある。


大きな一体となった災害 パート1

昼過ぎ 土曜日 ニューヨーク市ブルックリン区ウィリアムズバーグ

幅の狭い階段をドカドカと降りるとき、大都市で暮らしてみたいと心に決めたときのことを思い出そうとする。家賃が月3000ドルのちっぽけなアパートから、その日一杯かかるだろう買い物のために街へ繰り出そうとしている。この前大規模小売店に立ち向かったときは、店を取り巻いて正面玄関まで続く長い列で待たされた。その間に手の届く範囲のものはすべてかごに入れたために、必要ではないものを買い込むはめとなった。薄汚れた部屋から明るい太陽光の下に出てくる。隣人が夜通し大音量でアクション映画を見ていたので睡眠不足である。騒音はそれにとどまらない。1.5メートル先の道路では、泣き叫ぶような救急車のサイレンと自動車の鳴らすクラクションの音がある。混雑した側道の人の流れを縫うように行く。歩行者の町では人は歩き方を知っているものだ。しかし彼らは知らない。

もう少しの平和がほしい。生活に欠かせないもの・・・草、新鮮な空気、空間、のようなものが。郊外には間違いなくあるがここにはない。