2025/05/26
防災・危機管理ニュース
【北京時事】米中貿易戦争が長期化の様相を呈する中、中国で建国の父、毛沢東の言葉や論文「持久戦論」が脚光を浴びている。トランプ米政権は今月、対中追加関税を大幅に引き下げたが、緊張緩和は一時的との見方が強い。習近平政権には、英雄視される毛の教えを利用して愛国心をあおり、求心力を維持する狙いがありそうだ。
「米国は張り子の虎だ。はったりを信じるな。突けば穴が開く」。中国外務省の報道官は4月11日、X(旧ツイッター)に毛の1960年代の言葉を英語で投稿。その前日には、毛が50年代の朝鮮戦争時に米国への「完全勝利」を目指して戦うよう訴えた演説の動画を上げた。北京市共産党委員会の機関紙、北京日報(電子版)は先月28日、「今こそ持久戦論を読み返そう」と題した論評を掲載した。
毛が持久戦論を発表したのは日中戦争さなかの38年。戦争を「防御」「対峙(たいじ)」「反撃」の3段階に分け、時間をかけて徐々に状況を有利に変えるよう説く。悲観論にも楽観論にも傾かず、根気強く戦うことで最終的な勝利を収められるとしている。北京日報は、抗日戦と現在の米中対立を「同一視はできない」としつつ、毛の戦略的ビジョンは学ぶ価値があると強調した。
持久戦論が注目されたのは今回が初めてではない。米中貿易戦争に火が付いた第1次トランプ政権時代にも再評価の動きがあった。2020年7月の党政治局会議では、習総書記が対米政策などを念頭に「われわれの直面する多くの課題は中長期的なものであり、持久戦的観点から捉えなければならない」と檄(げき)を飛ばした。
第1次トランプ政権の対中経済圧力から教訓を得た習政権は、輸出先の多角化を推進。米国に代わるマーケットとして、東南アジアをはじめとする新興国市場の開拓を急いだ。科学技術で他国に依存しない「自立自強」を進め、官民挙げて人工知能(AI)やロボットといったハイテク産業を強化している。いずれも、毛と並ぶ終身指導者の地位を視野に入れた習氏の「持久戦的観点」からの対米戦略だ。
〔写真説明〕毛沢東の肖像画=2022年3月、北京の天安門(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方