国難災害の被害を大きく減らす耐震化

政府は2005年3月に東海、東南海・南海地震を対象に地震防災戦略策定し、3年後に減災効果を測定した。これによれば、想定死者数は4000名減少し、経済被害は11兆円減少した。死者数の半数、経済被害の7割は住宅等の耐震化の効果によるとされる。

残りの死者数の半数、経済被害の3割減少は、津波対策が進んだためとされる。そうなると、津波被害がほとんどない首都直下地震では、もっと効果が高いことになる。

また、阪神・淡路大震災における住宅倒壊と直後火災発生率は、図のように正比例関係にあり、全壊住宅が多いほど火災発生件数が多い。

大地震が発生することを前提とすれば、住宅耐震化は人命を守り、経済被害を激減させ、火災発生を抑える等極めて政策効果が高い事業である。これを自助に任せてきたため、特に所得が低かったり高齢化した地方ほど耐震化が進んでいないのである。ことここに至っては、公共事業として住宅耐震化を推進するのが望ましいと考える。

もう一つの課題は、古い賃貸住宅である。現在は、耐震診断、耐震工事をした場合に、貸主は重要事項説明で借主に耐震状況を伝えることになっている。一方で、耐震診断しなければ伝える必要はない。そうなると、古いアパートの貸主が耐震診断をするインセンティブがなくなり、かえって耐震診断が進まない。

そこで、旧耐震基準の1981年6月以前に建築確認をとったものは「極めて弱いと推定」、1981年6月から2000年5月までは「弱いと推定」、それ以降を「一応、安全と推定」と広告に載せ、重要事項説明で伝えることを提案したい。

2016年4月の熊本地震で倒壊した南阿蘇村のアパート (筆者撮影)

上の写真は熊本地震で倒壊し、大学生が亡くなられたアパートである。このアパートの広告には「改築後7年」と表示されていた。しかし、昭和40年代の航空地図に同形の建物があった。実際に見た時には、柱が細く、筋交いもなかった。このように、地震時に凶器となる古い賃貸住宅を野放しにしてはいけない。