【北京時事】イランとイスラエルの交戦を巡り、中国の習近平政権は一貫して友好国イランへの「支持」を公言し、先制攻撃したイスラエルを非難している。ただ、経済的つながりのあるイスラエルや同国の後ろ盾である米国との全面対立は避けたいのが本音。中東情勢に本格的に関与はせず、様子見を続ける構えだ。
 「紛争当事国に特別な影響力を持つ大国は、状況を沈静化させる努力をすべきだ」。習国家主席は19日、ロシアのプーチン大統領との電話会談でこう強調した。
 中ロとイランは近年、対米共闘の観点から外交・安全保障両面で連携を深めている。定期的に軍事演習を実施しているほか、イランは2023年以降、中ロ主導の上海協力機構(SCO)や新興国グループ「BRICS」に加盟。中国はイランの核問題を巡り、同国が「原子力を平和利用する権利」を尊重すると繰り返し表明し、米国が全面禁輸の対象としたイラン産原油を買い支えているとされる。
 今月中旬には、中国の薛剣・駐大阪総領事がX(旧ツイッター)に、イスラエルとナチス・ドイツを同一視する投稿を行い、ナチスは「ユダヤ人を虐殺」、イスラエルは「ユダヤ人が虐殺」などと主張した。イスラエルをおとしめることでイランに肩入れする狙いがあったとみられる。
 ただ、イスラエルのコーヘン駐日大使がXで猛反発すると投稿は削除された。同国のネタニヤフ首相が17年に訪中した際には、習氏と「革新的包括パートナーシップ」構築を宣言し、科学技術分野などでの協力推進を表明。中国はイスラエルの主要貿易相手国で、中国製電気自動車(EV)は急速にシェアを伸ばしている。イスラエルとの関係の過度な悪化を警戒したとみられる。
 中国は23年、長年対立してきたイランとサウジアラビアの関係修復を仲介した。習政権は「世紀の和解」と称して功績を誇示したが、中東における影響力ではいまだ米国に遠く及ばないのが実情だ。
 中国の著名論客、胡錫進氏はSNSで「イスラエルと戦うことは米国と戦うことに等しい」と指摘。「(中東の紛争は)中国の戦争ではない」として、過度な肩入れを避けるよう訴えた。 
〔写真説明〕中国の習近平国家主席=17日、アスタナ(カザフスタン大統領府提供)(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)