愛媛県今治市沖で2021年、日本の貨物船「白虎」と外国籍のケミカル船が衝突し3人が死亡した事故で、運輸安全委員会は30日、白虎がケミカル船に無線連絡せずに針路変更し、ケミカル船も不適切な操船をしたことが事故原因と考えられるとする調査報告書を公表した。
 報告書によると、当時、白虎は南西方向に、ケミカル船は北東方向に進んでいた。白虎の航海士はレーダーでケミカル船を確認していたが、十分距離があると判断し、無線で事前連絡をせずケミカル船の方向に針路を変更するよう指示した。
 ケミカル船の航海士は両船が接近していることに気付いたが、船長が船橋にいなかったため、船長の許可を得ず、互いに右側航行ですれ違うよう白虎に無線連絡。白虎は同意したが、ケミカル船の船長は同意に反して左へ大きくかじを切るよう指示を出し、白虎の左舷中央部にケミカル船の船首が衝突した。
 運輸安全委は、ケミカル船の船長が左へかじを切るよう指示した理由について「意図は明らかにできなかったが、白虎の船影を目の前にして冷静な判断に基づく操船ができなかった可能性があると考えられる」としている。
 事故は21年5月27日深夜に発生した。白虎(1万1454トン)とマーシャル諸島船籍のケミカル船「ULSAN PIONEER」(2696トン)が衝突し、約3時間後に白虎が沈没。白虎の乗組員12人のうち、60代の船長と20代の機関士ら3人が死亡した。 
〔写真説明〕2021年5月28日、愛媛県今治市沖で貨物船「白虎」と衝突したケミカル船「ULSAN PIONEER」(今治海上保安部提供)

(ニュース提供元:時事通信社)