2025/09/07
防災・危機管理ニュース
農業機械の自動運転に関する技術開発が進んでいる。農業の担い手不足が深刻となる中、農作業の効率化は喫緊の課題。大手メーカーは遠隔からの監視の下、「完全無人」で走行できるトラクターなどの実用化を急ぐ。ネックとなる公道・農道を通行する際の法整備に向けた検討も政府で進んでおり、メーカーは市場投入の準備を加速する。
ヤンマーホールディングス傘下のヤンマーアグリ(岡山市)は7月、屋内からの遠隔操作で動く無人トラクターを京都大学の施設で初公開した。操縦者がその場にいなくても自動で走行が可能な自動運転「レベル3」の技術を搭載。電波が通じる範囲なら国内のどこからでも動かせるという。
日高茂実先行開発部長は、無人トラクターの活用で「有人作業よりも畑の畝などの本数は確実に増え、その分の収穫量が増える」と強調した。
クボタは、ほ場内の作業に関してはほぼ自動化を実現している。人や障害物といった周囲の環境のより高度な認識など安全性確保の難易度が増すほ場外も含めて、技術的には数年以内にも自動運転が可能なレベルに到達すると見込む。
今後の焦点は「レベル3」の技術に対応した法整備だ。目視できる範囲での監視が必要な「レベル2」に比べ、遠隔監視が認められれば生産効率は大幅に上がる。だが、現状ではほ場間や倉庫からほ場までの公道・農道の自動運転に関する法律が整っておらず、クボタの北尾裕一社長は「安全をどう担保するかの取り組みが課題」と語る。
農林水産省の調査によると、農業を主な職業とする基幹的農業従事者は2024年に111万人と、21年から3年間で約15%減少した。こうした中、政府はコメの増産にかじを切った。各社は人手不足を補うためにも、法律が整備され次第、無人トラクターを投入できるよう開発体制を強化する構えだ。
〔写真説明〕モニター映像を見ながら無人トラクターを遠隔操作する体験者=7月2日、京都府木津川市
(ニュース提供元:時事通信社)

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