防災庁の設置などについて語る拓殖大学防災教育研究センター長の濱口和久特任教授

石破茂首相(自民党総裁)らを中心に、来年度中の設置を目指している「防災庁」。その石破首相が退陣を表明した。行方が注目される中、防災や危機管理に詳しい拓殖大学防災教育研究センター長の濱口和久特任教授(56)に、今後期待することを聞いた。濱口氏らは今年6月に首相官邸を訪問し、第5次提言『防災庁の設置に必要な視点』を石破茂首相に手渡している。

濱口氏は防災庁の設置について、賛成でも反対でもないとしたうえで、作るなら「大規模な省庁再編も辞さない構え」で臨むべきだと持論を強調した。例えば、災害時も「縦割り」だった内閣府、国土交通省、厚生労働省、総務省消防庁などへの指令を行えるようにし、警察や消防、自衛隊などの「実働部隊」にも指揮ができる、さらに地方自治体への指揮系統を一本化すべきだとした。それが実現できなければ防災庁を新たに設置する意味はないとする。現行の気象庁と復興庁を合併して、「防災復興庁」とする構想も提案する。

濱口特任教授は阪神・淡路大震災(1995年)以来の30年間で、国は「防災庁が『なければ』できないことと」と『なくてもできること』」の検証をしないまま、石破内閣は「(防災庁を)作るありきで進めてきた」と指摘。さらに、被災時の備蓄や避難所の整備などについても「(国は)実は防災庁がなくてもできることをやってこなかった。阪神・淡路大震災で、避難所の環境の悪さはテレビなどで詳しく報じられて少しは良くなった」としつつも、各市町村の財源には限りがあるので、備蓄品は国が一括して購入し、人口などに応じて各市町村に分配して、各市町村で管理をすれば良いと提言する。

防災庁については、今年度までに内閣府の防災に関する人員増や予算増は実現したが、設置に関しては、年明けの通常国会で設置に関する法案が出される見込みの中、「中央省庁や地方からの出向の単なる2、3年の『人事異動』」ではなく、専門的な職員を育成すべきだ」と話した。そのために、文部科学省所管外で、防衛省における防衛大学校や防衛医科大学校、気象庁の気象大学校のような専門性の高い幹部を育成する「防災大学校」を作るべきだとした。また、道徳が教科化されたのと同様に、防災を義務教育の小中学校から教科化して正しい知識を伝え、さらに、少子高齢化で普通科高校の定員が減少傾向にある中で、人数は少なくても良いので、各都道府県に一校でも、防災の専門科の公立高校を作るべきだと話した。

防災庁設置のポイントは、「要するに省庁再編してでも、『本気』」『やる気』があるか。専門的な人員を付ける予算を確保できるか」だとする。防災庁設置に向けて力を入れていた石破首相が辞意を表明した中で、「(首相が)誰になっていても、このポイントが大切」と話す。