イメージ(Adobe Stock)

今年1月に再びトランプ政権が発足したが、その関税政策は過去の第一次政権時とは異なる特徴を持ち、世界に大きな影響を与えている。半年が経過した今、トランプ関税の変化を振り返り、その背景と今後の企業経営の視点を探る。

トランプ氏が2017年に初めて大統領に就任した際、「アメリカ・ファースト」を掲げた貿易政策は、特定の国や品目に焦点を当てた戦略的なアプローチだった。主な狙いは、貿易赤字の是正と国内製造業の復活だったが、特に中国の不公正な貿易慣行や知的財産権侵害に対抗するため、鉄鋼、アルミニウム、電子機器といったセクターに集中的に関税を課した。

このアプローチは経済合理性を重視していた。たとえば、EUやカナダ、メキシコへの関税は一時的なもので、交渉を経て最終的に撤回や調整が行われた。これにより、同盟国への影響を抑えつつ、主要な競争相手である中国にピンポイントで圧力をかけることが可能だった。関税は単なる交渉の道具ではなく、実際に雇用創出や産業再生を目指す「実効性のある経済ツール」として機能していた。

第二次トランプ関税:政治的駆け引きを優先

一方、第二次トランプ政権の関税政策は、より広範囲かつ包括的なものへと進化している。2025年4月には、全ての国からの輸入品に対して一律10%の関税を課す方針が発表された。さらに、日本には24%、中国には34%、EUには20%といった国別の「相互関税」も打ち出された。

この変化の背景には、関税の目的が「経済政策」から「政治的ディール(取引)のための脅し」へとシフトしている点がある。トランプ氏は関税を交渉の武器として公言し、貿易相手国からの譲歩を引き出すことを優先している。たとえば、コロンビアに対しては、関税をちらつかせたことで不法移民の送還を受け入れる譲歩を引き出した例がある。

しかし、この一律関税には経済合理性が欠ける側面がある。広範囲な関税は、米国内での物価上昇やインフレを招くリスクが高い。自動車や電子機器など輸入依存度の高い産業ではコストが増加し、その負担は最終的に消費者に転嫁される。第一次政権ではこうした副作用を抑えるため対象を絞り込んでいたが、今回は広範な影響を容認する姿勢が顕著だ。