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高市早苗氏が日本の首相に就任すれば、停滞しつつも辛うじて協調を保ってきた日中関係に、新たな緊張をもたらす可能性がある。高市氏のこれまでの政治信条や言動は、中国が最も警戒する歴史問題と台湾問題において強硬な姿勢を打ち出しており、日中関係は今後、厳しく難しい局面に直面するシナリオが考えられる。日本の国益と地域の安定を維持するためには、高市政権は「戦略的互恵関係」の枠組みを堅持しつつも、日本の国益に関わる核心的利益においては毅然とした「原則外交」を展開するという、極めて高度なバランス感覚が問われることになる。

現在の日中関係は、経済的な相互依存を維持する一方で、尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵入の常態化や、台湾海峡を巡る緊張の高まりなど、安全保障上の課題が山積している。日中両国は形式的には「戦略的互恵関係」を掲げ、首脳レベルでの対話チャネルを維持しようと努力してきたが、中国の軍事費増大と海洋進出の加速は、日本の安全保障環境を直接的に脅かしている。高市氏が首相に就任することに、中国側は直ちに強い警戒感を示しており、中国の国営メディアなどは、高市氏の台湾関係者との面会や靖国神社参拝を問題視する報道を行っている。中国から見れば、高市氏は「日本の右派政治家の代表格」として認識されており、高市氏の行動が外交関係の悪化に直結するという強い懸念がある。

高市政権の対中外交において、関係悪化のリスクを高める要因は、主に三つの問題に集約される。第一に、靖国神社参拝を巡る歴史問題である。高市氏は、国会議員として終戦の日に靖国神社への参拝を続けており、首相就任後も参拝の可能性を否定していない。中国政府にとって、靖国神社参拝は「日本の軍国主義の美化」として見なされ、長年にわたり政治的な対日批判の最大の争点となってきた。もし高市氏が参拝を強行すれば、中国側は当然ながら猛烈に反発し、首脳会談は停滞あるいは途絶する事態に発展する可能性がある。