狂犬病発病犬(岐阜大学、源宜之教授撮影)

狂犬病ウイルスに感受性を持つ動物

ウイルスは細菌と異なり、代謝機能を持たないために自律的に増殖することができません。細胞が持つ高分子合成機構を利用することにより、侵入した細胞に自分の子孫ウイルスを作らせることにより増殖することができるのです。従って、ウイルスの種類により感染して増殖できる生物(この場合は動物)の種類、すなわち宿主域は異なり、その宿主域の幅も限定されます。

狂犬病ウイルスの宿主域は広く、さまざまな種類の温血動物に感染し、全ての感受性動物に高い致死率を伴う強い病原性を示します。また、前回紹介しましたが、世界中に広く狂犬病ウイルスは分布しています。人は、ほとんどの場合、犬から受ける「かみ傷」で感染して発病しますが、他の多くの動物も同じような経路で狂犬病ウイルスに感染します。

図1:世界各地の狂犬病媒介動物

図1に示しましたが、世界中で犬以外のいろいろな種類の野生動物も、人あるいは飼育犬へウイルス感染を引き起こす媒介動物になっています。警戒しなければならない動物は犬だけではありません。
日本では、狂犬病防疫のために2本の法律、すなわち狂犬病予防法と家畜伝染病予防が制定されています。対象となる動物が法律によって区分けされています。例えば、狂犬病予防法では、犬、猫、アライグマ、キツネ、スカンクが対象動物で、家畜伝染病予防法では牛、馬、めん羊、山羊、豚、水牛、シカ、イノシシが対象動物となっています。