6月18日に発表されたDAZNのお詫び(HPより)

世界最大のスポーツイベントであるサッカーのW杯が6月12日に開幕。日本は1勝1分けで決勝トーナメント進出を大きく引き寄せている。その裏でW杯の視聴契約を巡ってSNSで大炎上していたのが、スポーツコンテンツの配信会社であるDAZNだ。W杯の全試合を視聴できる年間契約プラン表記に問題があり、13日にお詫びを発表した。しかしその対応も反感を買い、炎上は継続。最終的には年間プラン自体を取り下げた。DAZNの何が問題だったのか、消費者問題に詳しい住田 浩史弁護士に聞いた。

不誠実な広告

消費者問題に詳しい
住田 浩史 弁護士

ーーDAZNの入会申し込み契約で何が問題だったのでしょうか?

ひとことでいうと、申込みの誘引から契約、そして、問い合わせ、解約手続きに至るまでユーザー体験(UX)全体が著しく不当だった、ということです。

まず、広告表記が非常に不誠実です。この時期にDAZNに初めてアクセスする消費者の多くはサッカーW杯を見ようとする人です。そして、そこには、2つのプランが表示されていました。

通常プランである「DAZN STANDARD」と、4月21日から8月20日まで申し込める期間限定プランの「DAZN SOCCER」です。キャンペーン割引で「DAZN STANDARD」は月額料金が1980円、「DAZN SOCCER」は月980円と表示されていました(改修前表示)。消費者は、当然、後者をクリックしますね。

改修前表示では、最終確認画面でも冒頭に大きな文字で「月間プラン」と表示していました。しかし、その後にごちゃごちゃとした記載のなかに、グレーの小さな文字で年間契約であり途中解約ができないこと、支払総額が26,340円になることが混入されていました。つまり、最終確認画面に月単位契約と年単位契約の文言の両方が併記されていました。契約すると年単位の料金を払うはめになるわけです。

これは、不当であり、かつ、違法です。具体的には、景品表示法で定められている「有利誤認表示の禁止」に該当します。そもそも誘引の時点から月単位プランの「DAZN STANDARD」と年単位契約の「DAZN SOCCER」をあえて並べて比較することを含め、解約しやすい月間契約に見せかけていることで、消費者に誤認させています。

消費者契約法上の不実告知や民法上の詐欺や錯誤にも当てはまる可能性があります。また、特定商取引法12条の6では最終確認画面において「人を誤認させるような表示」をしてはならないとされ、同法15条の4は誤認させる内容の表示は取り消せるとしており、改修前表示はこれにも該当する表示でした。

きっかけは直木賞作家のツイート

ーーSNSでの最初の批判ピークは、直木賞作家の万城目学さんのX(旧Twitter)でのツイートです。作家活動を20年も続けていても、980円プランに騙されて解約できないと6月11日にツイートしました。続々と同じケースが報告されていきました。

意図しない申込みについての批判がSNS上で増えるにつれて、DAZNもまずいと思ったのでしょう。6月11日20時に、告知なしに、契約の最終確認画面では「月間プラン」の表示を消し、改修後表示を「年間プラン(月々払い)」としました。告知や発表なしに急にUIを変えることの問題点は、後々、消費者が、何を見て契約したのかが立証できなくなることです。ここに至ってもDAZNは自己保身的な振舞いを続けます。

ーーSNSで炎上が続く中、DAZNは6月13日に「DAZN Soccer」の契約者に向けて今後の対応を発表しました。しかしそれも反感を買う結果になり、炎上は止まりませんでした。問い合わについての返答もありませんでした。

DAZN問い合わせ画面の入力。数日たってもメールによる連絡は届かなかった。

問い合わせや解約手続きそのものについてレスポンスが遅い、というのは、しばしば外資系の企業にみられる対応ですが、これは、おそらく、日本法人には素早く判断して対応する権限がないためと思われます。