米国とイランの軍事衝突の先行きは、まだ見通せない(写真:Adobe stock)

米・イランの軍事衝突において、6月中旬に了解覚書(MOU:Memorandum of Understanding)が結ばれ停戦し、60日間の交渉期限が定められた。その後も小競り合いが続く中で、本当に合意に至るのか疑心暗鬼が渦巻く状況ではあり、今回はこのMOUの内容から類推して、行く末を考察してみたい。

まずは全14項目からなるMOUの骨子を見てみる。

  • ①恒久的和平交渉の期間設定;60日間の交渉期間設定(合意による延長は可能)
  • ②戦闘の即時停止・軍の撤退;永続的な戦闘停止・合意後30日以内の米軍撤退
  • ③ホルムズ海峡解放・海上封鎖解除;海峡の60日間の安全航行確保、30日以内の封鎖解
  • ④核開発問題;イランの核開発・調達放棄、IAEAの監督下での濃縮物質の処分
  • ⑤経済制裁解除・復興支援;全ての独自制裁解除、凍結資産解除、48兆円規模の復興基金

この中で、巷で批判が強いのが、④の核開発問題である。これは、実質的には、元々求めていた備蓄された濃縮物質の引き渡しなどを意味し、米国主導での完全廃棄を目指すものからは大きく譲歩したものだ。そのため、米国内の強硬派からは強い批判を受けている。

実態は対中包囲網の一環

これは本当に米国の弱腰によって譲歩をし過ぎた結果なのだろうか。この疑問に対して、筆者自身は全く異なる見解を持っている。今回のMOUを考察してみると、実は、この譲歩こそが、この先のグローバル環境を劇的に変化させ得る要素を、最も含んでいると考えているのだ。

このロジックを説明するのに必要不可欠なのは⑤の経済制裁解除・復興支援である。合わせて、ここ最近の米国の動き、トランプ政権における動きとその結果を見ることが必要だ。

ベネズエラに電撃攻撃を仕掛け、結果として同国の石油利権を中国の権益から奪い返したのが米国だ。キューバに対しても経済的圧力と強硬な交渉を通じて親米的な体制への転換を強く迫っている。

これらは、一時は西半球に特化したものの様に語られた時期もあるが、実態は対中包囲網の一環であり、グローバルの枠組みの再編を着々と進めていると見るのが妥当であろう。そうした観点からすると、中・露・イランのトライアングルを崩し、イランを親米国家とまではいわなくとも、中国との関係を断つ方向に向かわせる戦略が有効であることは言うまでもない。イランは大国なのでベネズエラの様に力でねじ伏せることはできないだろうが、経済的側面も含めて取り込むことは目指せる。

その道筋が見えて来たのなら、核開発問題に関しても、当初のリスクとは根本的に異なる状況になり、譲歩も可能になるのは当然で、それが有効な交渉カードになるなら使わない手はないのだ。