2012/11/25
セミナー・イベント
RICONスペシャル・カンファレンス
本誌がセミナー企画協力
10月17∼19日の3日間にわたって、東京ビッグサイトで行われた国内最大の危機管理のイベントである危機管理産業展(RISCON TOKYO)2012では、本誌リスク対策.com企画協力の「BCPへの投資と企業の新たな成長モデル」と題したセミナーが開催された。BCPの成熟度が高いとされる外資系金融機関のバークレイズと、これまで国内で先駆的にBCPに取り組んできた半導体製造装置メーカーの㈱ディスコ、物流企業の川崎陸送㈱に加え、主に中小企業へのBCPを推進してきた専門家が、経営戦略としてのBCPの構築方法や、外部から評価される仕組みについて意見を交わした。
バークレイズバイスプレジデントの佐柳恭威氏は、首都直下地震などの大規模災害時における事業継続の実現のためには、①代替オフィス、②人的リソース、③移動手段の3つの確保が重要とした。具体的に、同社が入居する六本木ヒルズは、地下に都市ガスの発電施設を持ち、災害時でも電力が途絶えることがないこと、仮に六本木ヒルズが使えない場合でも代替オフィス・データセンターを確保していること、災害発生後に公共交通機関が混乱しても速やかに移動ができるようにオフィス近くの倉庫に約50台の自転車を完備していること、万が一の非常時に備えヘリコプターの優先利用契約を結んでいることなどを紹介した。
ディスコBCM推進チームリーダーの渋谷真弘氏は、有効性の高いBCPを実現するためには平時からの取り組みが重要とし、同社の事業継続マネジメントシステム(BCMS)について発表した。同社は、今年5月にBCMSの国際規格であるISO22301の認証を国内で一早く取得している。渋谷氏は、建物の免震化やサーバーの2重化、製造部品の在庫備蓄などのハード対策に加え、深刻な被害が起こる可能性が低い震度5弱程度の地震でも安否確認を行うなど、大規模災害が起きた時に迅速に対応できるように、日頃からの業務にできるだけ災害対策を組み込むなどソフト面にも力を入れていることを強調した。
川崎陸送(株)代表取締役社長の樋口恵一氏は、製造業をはじめとする多くの産業の供給の担い手である物流業は、非常時には絶対に事業を止めることができないため、BCPは、物流業の最重要サービスの1つで、経営に直結する問題だとした。ツイッターによる従業員間の連絡や、外国製の自家発電装置の購入、トラックのバッテリーを使った蓄電システム、さらには日頃からの訓練や従業員を交えたブレインストームなど、中小企業ならではのコストを抑えた最大限のBCP対策の成果を得る工夫について話した。
各社の事例を踏まえ、眞崎リスクマネジメント研究所の眞崎達二朗氏は、こうしたBCPへの取り組みが銀行や保険会社などの金融機関から評価される可能性について解説。日本政策投資銀行が、防災や事業継続の取り組みを独自の評価制度に従って評価するBCM格付け融資制度や、民間の保険会社における、BCP策定企業に対しての利益保険加入の割引制度などを紹介したが、「一般の企業、特に中小企業に対して、こうした評価制度を広げていくことは無理」と指摘した。その上で眞崎氏は、1970年代に品質マネジメントシステムが日本の企業全体に浸透したことについて言及。「当時は、欧米に遅れているという危機感のもと、企業の経営者が必死に勉強し、欧米のマネジメントシステムをもとに日本独自の品質管理手法を考えだした。今の経営者は真剣さが足りないことが、BCPがいつまでも普及しない最大の理由であると思う」と語った。
セミナー・イベントの他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/26
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方