【ワシントン、カイロ時事】米国とイランが戦闘終結に向けて6月に署名した覚書は、60日の交渉期間内の最終合意を目指したが、緊張緩和に至らず形骸化した。米政治専門メディア、ポリティコによれば、17日に期限が切れる前に延長の動きは見られない。原油輸送の要衝ホルムズ海峡開放は依然不透明な状況で、紛争は長期化の様相を呈している。
 ◇トランプ氏は手詰まり
 「ホルムズ海峡を掌握しているのは米海軍だけだ」。トランプ米大統領は10日、記者団にこう強弁し、対イランで強気の姿勢を再び示した。しかし、イランが歩み寄る気配はなく、手詰まり状態に陥っているのが実情だ。
 トランプ氏は、橋や発電所などを含む「大規模攻撃」を示唆しては、直前で取り下げることを繰り返してきた。軍事的圧力を高めてイランに海峡開放を迫る狙いだったが、実施に踏み切れていない。2月末に開始した対イラン軍事作戦で防空システムなどの弾薬を大量に消費し、備蓄不足に陥り、イランの報復攻撃への対処が困難になっているためとみられている。
 11月の中間選挙まで3カ月を切り、紛争の影響で高止まりするガソリン価格の引き下げが政権の「最優先課題」(バンス副大統領)になっている。トランプ氏は、海峡開放の実現で「勝利」を宣言し、開戦当初の目標だったイランの核計画制限を棚上げしてでも早期に幕引きを図りたいのが本音との見方は多い。
 打つ手が限られる中、トランプ氏は今後、イラン港湾に対する海上封鎖を継続し、経済制裁を強化する方針。ベセント財務長官は13日、「これまで見たことのない措置を適用する」と表明した。だが、石油禁輸など既存の制裁以上の効果が見込めるかは不明だ。
 ◇海峡封鎖で優位狙う
 一方のイランは、海峡封鎖で世界経済を「人質」に取り、対米交渉で優位に立てることを認識した。8日には海峡開放の条件として、米イスラエルの攻撃に伴う損害の賠償を突き付け、応じなければ両国が関連する船舶の通航を禁止する構えを示すなど要求を釣り上げた。
 科学調査・中東戦略研究センター(イラン)のジャバド・ヘイラン・ニア湾岸研究グループ長は、「ホルムズ海峡はイランにとって戦略的な切り札になった」と分析。「一度開放しても迅速に再封鎖できる。イランにとって海峡がもたらす『抑止力』は核抑止力より重要だ」とその威力を指摘する。
 ニア氏の見方では、イランは海峡の航行を不安定化し、今後の交渉で資産凍結解除などの要求を米側に受け入れさせる狙いがある。だが、イランの求めに米国が応じる可能性は低く、海峡の通航正常化は遠のきつつある。 
〔写真説明〕ホルムズ海峡の船舶=10日、イラン南部沖(AFP時事)
〔写真説明〕トランプ米大統領=10日、ワシントン(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)