(イメージ/Adobe Stock)

近年、顧客や取引先などからの悪質な迷惑行為により、従業員が精神的ストレスを受け、休職や離職に追い込まれる事態が社会的問題となっています。厚生労働省が発表した令和5年度の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に労働者から「顧客等からの著しい迷惑行為」(カスタマーハラスメント)の相談があったと回答した企業の割合は27.9%となっており、3年前に比べ8.4ポイント増加しています。

従業員の労働環境を守り、事業を健全に維持するには、外部からの不当な圧力・侵害に対して適切な対処が不可欠との認識が広がっています。このような社会状況を反映し、2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法により、全ての事業者にカスタマーハラスメントの防止措置が義務付けられます。企業規模にかかわらず全企業が対象であり、適切な対応を取るための体制の整備が急務となっています。

カスタマーハラスメントの定義

「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(カスハラ指針)では、次の3つを全て満たすものが「カスタマーハラスメント」(カスハラ)としています。

①職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、

②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、

③当該労働者の就業環境が害されるもの

​(カスハラ指針より)

カスハラの具体的な形は業種や業態によって異なりますが、カスハラ指針では、社会通念上許容される範囲を超えた言動の例として、次のものを挙げています。カスハラに類する行為は、暴行罪、器物損壊罪などの犯罪行為にも該当する可能性があります。

<言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの>

①そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
・性的な要求や、労働者のプライバシーに関わる要求をすること

②契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
・契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること

③対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
・契約金額の著しい減額の要求をすること

④不当な損害賠償要求
・商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること


<手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの>

①身体的な攻撃(暴行、傷害等)
・殴る、蹴る、叩く等の暴行を行うこと

②精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
・労働者の人格を否定するような言動を行うこと
・SNS等のインターネット上へ悪評や労働者のプライバシーにかかる情報を投稿することをほのめかすこと
・土下座を強要すること
・盗撮や無断での撮影をすること
・相手の性的指向・ジェンダーアイデンティティの機微な個人情報について本人の了解を得ずに他の者に暴露すること又は本人が開示することを強要する若しくは禁止すること

③威圧的な言動
・大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること
・反社会的な言動を行うこと

④継続的、執拗な言動
・同様の質問を執拗に繰り返すこと
・話をすり替え、揚げ足をとり、執拗な責め立てをすること

⑤拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
・長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること 

​(カスハラ指針より)