普及しているツールで多くの自動化が可能(daily_creativity /Adobe Stock)

ここからは、多くの企業で採用されているMicrosoft365 やGoogle Workspaceなどのツール活用しての、図1に示したLevel 1からのステップアップを紹介します。図1ではMicrosoft365の各種ツールを明示しています。

費用を掛けない内製自動化

Level 2に到達するためには、スマートフォンやPCから被災状況を入力できる報告フォームを整備します。これにより、「報告書式の統一」「リアルタイムの情報更新」「入力ミスの削減」「情報の自動蓄積」が可能になります。

Level 3の実現には、「拠点責任者に報告を依頼」「報告受信を災害対策本部に通知」「状況更新の通知」のような自動通知機能を搭載する必要があります。そして自動集計により、被害拠点数や操業停止拠点数、ライフライン障害状況の一覧表を作成できるように。さらに、これらの情報を統合したダッシュボードを作成すれば、報告内容を地図上に表示し、正常、注意、重大、未確認をアイコンと色分け表示することで、対策本部は被害状況の全体像を瞬時に把握することも容易になります。

ここまではAIなしに実現が可能です。事務局の負荷は大幅に軽減され、実用的なレベルに到達できるでしょう。

AIを活用した対策本部DXの第一歩

Level2からLevel3までの整備によって、情報は標準化され、データを蓄積できるようになっています。ここで初めて、AI活用や高度な自動化の効果を発揮できる土台が完成します。言い換えれば、情報収集の標準化と集約ができていない状態でAIを導入しても十分な効果を得ることはできません。AI導入の原則はデータ環境の整備が基本です。つまり対策本部DXはLevel 0から順番に成熟させていくことが重要なのです。

そして、ここからは生成 AI の有償ライセンスを利用することで、自動化範囲をさらに拡大できます。「情報を集める仕組み」から「情報が自然に流れる仕組み」へ進化します。「未報告拠点への自動督促」「重大インシデント発生時の役員通知」「承認フローの自動発動」「外部システムとのデータ連携」といった機能の追加が可能になります。さらに有償ライセンスの生成AIを活用すると、対策本部専用のAIアシスタント(BCPナレッジボット)を構築できます。

これらの更新により、対策本部要員が「停電拠点は何カ所あるのか」「安否確認率は何%か」「被害拠点一覧を表示してほしい」と入力すると、最新データをもとに回答を得ることができます。BCPや災害対策マニュアル、初動対応手順書、危機管理規程などを学習させることで「震度6強発生時の初動手順を教えて」といった質問にも即座に回答できるようになります。

AIによる情報要約と経営報告の支援

AIの最も効果が大きいのは、経営向け報告資料作成の支援です。従来は各拠点から届いた多数の報告を事務局が確認し、状況を整理したうえで報告書を作成していました。生成AIを活用すると、「被害状況の要約」「重要論点の抽出」「影響範囲の分析」「経営向けの要約」のそれぞれを自動作成できます。事務局は内容確認に集中できるため、本来行うべき経営支援機能を強化できます。

普及しているMicrosoftのツールを使えば、ここまでが可能になることを説明しました。対策本部DXの本質は、AI導入そのものではなく、「人が情報整理に費やしていた時間を削減し、経営判断支援に集中できる状態を作ること」にあります。Level 0からLevel 4への成熟度向上は、単なるシステム導入ではなく、危機発生後3時間の情報収集能力そのものを強化する取り組みです。