カムチャツカ半島地震による津波対応の教訓を南海トラフ地震に生かす(イメージ:写真AC)

先月、カムチャツカ半島地震にともなう津波警報で、沿岸に拠点を持つ企業は情報の収集や伝達、防災行動の呼びかけに追われました。より大きな津波が想定される南海トラフ地震への備えは大丈夫でしょか?

去る7月1日、国は2014年に策定した「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」の大幅な見直しを決定しました。抜本的に改めるのは今回が初めて。2024年元日に発生した能登半島地震の教訓、そして「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書 概要」(2025年4月4日)を踏まえ、実効性のある防災対策が打ち出されています。

また国は8月7日、南海トラフ地震発生の確率が高まったときに発表される「南海トラフ地震臨時情報」についても、自治体や企業がとるべき対応を示したガイドラインを改訂しています。あらためて、南海トラフ地震への対応を考えます。

1.南海トラフ地震の想定被害

前述の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキング報告書 概要」に基づいて、被害想定を確認します。

(1)震度分布・津波高

神奈川県から鹿児島県までの主に太平洋側の広い範囲で震度6弱以上が発生するとともに、静岡県から宮崎県までの主に沿岸域の一部で震度7が発生するとされています[図1]。

[図1]南海トラフ地震の想定震度分布

画像を拡大 「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書概要(令和7年4月4日)」(2025年4月4日、内閣府 防災担当)

また津波高の想定も、福島県から沖縄県の太平洋側の広い範囲で高さ3メートル以上の津波が到達するともに、高知県幡多郡黒磯町、土佐清水市で最大約34メートルの津波が発生するとされています。

あわせて津波は、静岡県静岡市、焼津市などで1メートル以上の津波が最短2分で到達するとなっており、津波の到達速度にも注意が必要です。

(2)人的損害および建物の損害など

1)人的被害
直接死は、地震が冬の深夜に発生した場合、約17.7万人(早期避難意識が70%)~約29.8万人(早期避難意識が20%)と想定されています。また、災害関連死についても、約2.6万人~約5.2万人と想定されていますが、被災後の状況によってはさらなる増加につながる恐れがあります。

2)建物の損害
全壊・焼失棟数は約235万棟で、そのうち揺れによるものが127.9万棟といちばん多く、次いで地震火災によるものが約76.7万棟となっています。

これまでの地震対策の効果は一定程度あるものの、強い揺れや津波が広域で発生することにより、膨大な数の死者や建物被害、全国的な生産・サービス活動への影響など、甚大な被害が発生すると考えられています。

2.南海トラフ地震臨時情報

(1)臨時情報に対する基本的考え方

南海トラフ地震臨時情は、南海トラフ沿いの想定震源域で一定規模以上の地震が発生した場合などに、続けて大規模地震が発生する可能性が平常時と比べて相対的に高まった場合に発表される情報です。

先発地震の発生場所や規模等によって「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」や「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」等が発表され、これを受けて国は情報の種類に応じた防災対応を呼びかけることとしています。臨時情報が発表されるまでの流れは[図2]の通りです。

[図2]臨時情報が発表されるまでの流れ

画像を拡大 「南海トラフ地震臨時情報防災対応ガイドライン 概要版(令和7年8月(改訂))」(内閣府 防災担当)