社会的に問題視されるようになったカスタマーハラスメント(イメージ写真:Adobe stock)

はじめに

2025年6月、「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。この法律は3つの法律の一部を改正することをとおして、主として、①カスタマーハラスメント対策の義務化、②求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策の義務化、③女性活躍の更なる推進を図るものであり、本年10月1日から改正法が全面的に施行されるに至りました。

この度の改正は事業主に対して必要な措置を義務づけるなど重要なものになっていますので、今回から【前編】【中編】【後編】の3回に渡って、上記①~③に関する主なポイントについてご説明したいと思います。

【前編】である今回は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下「労働生活総合推進法」)の一部改正として、①カスタマーハラスメント対策の義務化を取り上げてみたいと思います。

労働生活総合推進法の一部改正

近年、カスタマーハラスメントが社会問題化してきました。顧客からサービス提供者に対して向けられる過剰な要求や暴言・暴力などのカスタマーハラスメントにより、労働者の就業環境が害されることが散見されるようになり、これまで企業や業界団体などが独自に対策を講じてきました。

そして、この度、カスタマーハラスメントにより労働者の就業環境が阻害される事態に対応すべく、労働生活総合推進法の一部が改正されました。この改正の中には、国、労働者、顧客の責務の新設も含まれていますが、労働生活総合推進法33条では、職場における顧客等の言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等として、次の各事項が定められて定めています。

  • ●カスタマーハラスメントに関して事業主が雇用管理上必要な措置を講じる義務(1項)

    ●労働者がカスタマーハラスメントに関する相談を行なったことなどを理由とする当該労働者に対する不利益取扱いの禁止(2項)

    ●他の事業主からの求めによる1項の措置の実施に関する必要な協力を行う努力義務(3項)

上記のうち、事業主の義務(1項)がこの度の改正のメインであるといえますので、今回はこれを中心に取り上げてご説明します。なお、その際、労働生活総合推進法33条4項に基づき厚生労働大臣が策定している「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「指針」)を引用・参照します。

カスタマーハラスメントとは

労働生活総合推進法においてカスタマーハラスメントという文言が用いられている訳ではありませんが、事業主の義務を定めた33条1項に拠ると、次の①~③の要件全てを満たすものが、事業主に必要な措置を講じることが義務付けられているカスタマーハラスメントになります。

  • ①職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(顧客等)の言動であること

    ②雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えた言動であること

    ③労働者の就業環境を害する言動であること

 

上記要件に関し、各文言の意義は下表のとおりです。