声優の声を生成AIで模倣した動画をめぐる訴訟で、パブリシティ権が争点に浮上した(イメージ写真:Adobe stock)

はじめに

著名な声優の方が、生成AIにより自身の声を模倣して作成された動画がSNS上で無断で公開されており、それが自身のパブリシティ権を侵害するなどとして、SNS運営会社に対し、パブリシティ権などに基づいて当該動画の削除を求めていた訴訟の判決が、9月末、言い渡されました。これは、東京地方裁判所で争われていたものですが、広く報道されるところとなり、話題になりました。

SNS上に無断公開された動画をめぐって訴訟となった(写真:Adobe stock)

報道によると、訴訟の結果としては、すでに当該動画が削除済みであることを理由に請求が棄却された(原告である声優側が敗訴した)ものの、判決では、声もパブリシティ権の対象・客体に含まれるという旨の判断が示されたようで、この判断につき先例的価値があるものとして、注目されています。

そこで、今回は、そもそもパブリシティ権とはどのような権利なのか、どのような場合にその侵害となるのかなどについて、ご説明したいと思います。

パブリシティ権の定義

パブリシティ権という名の権利については、民法や著作権法といった制定法の明文で規定されているものではなく、学説・判例により認められてきた権利です。

人の生命、身体、自由、名誉、氏名、プライバシーなど法的保護に値する人格的利益を総称して人格権といわれますが、パブリシティ権もこの人格権の一つとして理解され、位置づけられています。

最高裁は、パブリシティ権の定義・法的性質につき、次のように判示しています(平成24年2月2日・民集66巻2号89頁)。

人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される(略)。

そして、肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。

これによると、パブリシティ権とは、「個人の氏名・肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利」であると定義できることになります。

また、この定義に表れているように、パブリシティ権は、人格的利益それ自体を保護する権利というよりも、氏名・肖像等の商業的価値から生じる財産的利益を保護する権利としての性質があるものであるといえます。