画像を拡大 企業を狙った不正アクセスにより、個人情報が大規模に漏えいしたというニュースが相次いでいる(イメージ:Adobe stock)

はじめに

近時、個人情報の大規模な漏えいのニュースが立て続けに報じられており、我々はこのような状況に慣れつつあります。個人情報の大規模な漏えいが発生したと報道されても、さほど驚かないようになってしまっているのではないでしょうか。

個人情報の大規模な漏えいが立て続けに発生している背景にはAIの悪用があるといわれていますので、残念ながら、当面はこういった事態が続くのではないかと思われます。

個人情報が漏えいしてしまった場合において企業に求められる対応については、「個人情報の漏えい時の対応【前編】【後編】」とでお伝えしました。

その中には含まれていませんが、個人情報が漏えいした場合においては、企業が本人に慰謝料として賠償金や見舞金を支払うということがあります。そして、その金額を巡っては、低廉に過ぎるのではないかなどという意見や感想が散見されるところです。

そこで、今回は、個人情報の漏えい時の対応【番外編】として、個人情報漏えい時の慰謝料としての賠償金や見舞金の目安や相場について、先例をご紹介しながら、考えてみたいと思います。

損害賠償請求訴訟のリーディングケース

個人情報が漏えいした場合における損害賠償請求訴訟の我が国におけるリーディングケースは、最高裁判決平成15年9月12日・民集57巻8号973頁になります。ちなみに、同じ年の5月23日に個人情報保護法が成立しています。

個人情報は、プライバシーとの関係で法的保護に値するとされた(イメージ:Adobe stock)

この事案は、外国の要人による講演会を主催した大学が、参加申込者である学生の学籍番号、氏名、住所及び電話番号が記載された名簿について、警察の求めに応じて、当該学生らの同意がないまま、警察に同名簿の写しを(他の名簿とともに)提供したケースです。それに対して、プライバシーの侵害に該当するとして損害賠償請求訴訟が起こされました。

現在では想像し難いことですが、上記訴訟では、そもそも、参加申込者である学生の氏名、住所等の個人情報が法的保護の対象になるか否かが争点のひとつとなりました。これに対しては、次のように判示され、個人情報がプライバシーとの関係で法的保護に値するものであることが確認されました。

このような個人情報についても、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものであるから、本件個人情報は、上告人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきである。

その上で、大学が学生に無断で個人情報を警察に提供したことについては、次のように判示され、不法行為に該当する、つまり、不法行為を理由とする損害賠償責任を負い得ることが示されました。

同大学が本件個人情報を警察に開示することをあらかじめ明示した上で本件講演会参加希望者に本件名簿へ記入させるなどして開示について承諾を求めることは容易であったものと考えられ、それが困難であった特別の事情がうかがわれない本件においては、本件個人情報を開示することについて上告人らの同意を得る手続を執ることなく、上告人らに無断で本件個人情報を警察に開示した同大学の行為は、上告人らが任意に提供したプライバシーに係る情報の適切な管理についての合理的な期待を裏切るものであり、上告人らのプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。