10月1日に内定式を開催する企業が多い(イメージ写真:Adobe stock)

はじめに

10月1日、多くの企業で内定式が開催されました。リクルートスーツに身を包み、内定式帰りで晴れがましい様子の学生たちを見かけ、微笑ましく感じたという方々も多いのではないかと思います。

どうして多くの企業が10月1日に内定式を開催する傾向が見受けられるのでしょうか。これについては、経済団体・業界団体等の長に向けて2025年3月21日に発出された「2026(令和8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」(内閣官房内閣審議官・文部科学省高等教育局長・厚生労働省人材開発統括官・経済産業省経済産業政策局長)が関係しています。

「就職・採用活動の円滑な実施及び学生が学業に専念できる環境の確保」という目的の下、同別紙において、「2026(令和8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請事項」が示されており、その中で「正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降」とされているのです。

このため、正式な内定のいわば解禁日が10月1日ということになり、非常に多くの企業において、解禁日当日たる10月1日に内定式が開催されています。

一方、内定式後であっても、入社までの間、内定者に業務に従事してもらうわけではありません。そうすると、内定後の企業と内定者との間の法的関係、つまるところ採用内定の法的性質はどのようなものなのかという疑問が浮かんでくるところです。このことは、採用内定を取り消す場合の問題にも関わってきます。

そこで、今回は、民間企業における採用内定の法的性質とその取消しについて取り上げてご説明したいと思います。

採用内定の法的性質

面接などの選考を経て、採用の内定が出される(イメージ写真:Adobe stock)

日本企業においては、長年の慣行として新規学卒者の一括採用が行なわれてきました。この場合において、①新規学卒者採用の募集→②学生による応募→③企業による選考→④採用内定→⑤採用、というプロセスを経ることが一般的です。

この慣行・プロセスとの関係で、採用内定の法的性質について、最高裁判決(昭和54年7月20日・民集33巻5号582頁)は、大要、採用活動等の実態が多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難であり、具体的事案における事実関係に則して採用内定の法的性質を検討する必要があるという留保をしつつ、次のように判示しています。

(引用者注:当該事案における認定された)以上の事実関係のもとにおいて、本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であって、被上告人の本件誓約書の提出とあいまって、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和44年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の5項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのを相当とした原審の判断は正当

つまり、新規学卒者一括採用について、一般的に見受けられる慣行・プロセスを契約法理に当てはめたとき、次のように整理できるということです。

●新規学卒者採用の募集=申込みの誘引

●学生による応募=労働契約の申込み

●採用内定=申込みに対する承諾

そして、契約は申込みと承諾の合致により成立しますので、採用内定により直ちに企業と学生との間に労働契約が成立することになります。しかしながら、当該労働契約は、次年度4月1日を始期としており、かつ、解約権が留保されたものであるとされます。

つまり、上述のような一般的な慣行・プロセスを経る場合においては、採用内定により、企業と学生(内定者)との間で始期付き・解約権留保付きの労働契約が成立することになるのです。