2019/01/21
防災・危機管理ニュース

東京都は21日、町田市と合同帰宅困難者対策訓練を実施した。外国人65人を含む約500人が参加。多摩地区でM(マグニチュード)7.3、震度6強の地震が発生した想定で、JR・小田急町田駅や周辺の一時滞在施設などで訓練を行った。5回目にして区部ではなく多摩地区で初の合同訓練で、さらに都県の境を越えて神奈川県相模原市も協力した。
鉄道や通信といった企業も協力。小田急町田駅では、新宿駅から箱根湯本駅に向かう特急ロマンスカーが地震で停車した想定で、外国人乗客を誘導。パナソニックの翻訳拡声器「メガホンヤク」を用いて、英・中・韓の3カ国語で一時滞在施設に案内する旨の誘導を行った。

一時滞在施設のひとつである「ホテルラポール千寿閣」には約50人の参加者が訪れ、受付後に備蓄品を受け取った。その後、都と町田市、NTTドコモとKDDIによる説明会を実施。ドコモやKDDIからは施設に置かれる無料充電器や無料Wi-Fiの説明が行われた。都からは電話会社の災害用伝言板や「東京都防災アプリ」を用いた安否確認の方法の説明のほか、二次災害の防止や多数の帰宅者が道路をふさぎ救助作業の妨げにならないよう、発災後の移動を控えるように呼びかけが行われた。
町田駅周辺での帰宅困難者の発生想定は1万2268人だが、一時滞在施設は公共8、民間5の13施設で1万4800人分を確保している。うち先述した千寿閣と「町田ボウリングセンター」の民間の2施設は相模原市内の施設。町田駅は相模原市との境に位置している。相模原市側の施設では町田市と相模原市の両市と帰宅困難者受け入れの協定を結んでいる。両市では以前も合同訓練を行っており、災害対策で連携を密にしているという。
訓練後の講評で都の多羅尾光睦副知事は首都直下地震で都内において約517万人の帰宅困難者が出る可能性を指摘したうえで、「公助は大事だが、自助・共助も重要。地域や企業も含めた総合的な取り組みが実を結ぶ」と述べた。町田市の石阪丈一市長は「寒さや雪、暑さなどが考えられるが、悪条件でも対応できる基礎はできたと思う」と語った。
■関連記事「東京都、備えを学び災害時役立つアプリ」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4914
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方