BCPは時代の要求に追いついているか?
第38回:オールハザード型BCPの課題その2
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
2025/10/15
企業を変えるBCP
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
前々回の寄稿で、危機管理・BCPは、リスクマネジメントとしての「守り」から、企業戦略としての「攻め」にシフトしていると申し上げました。上場企業にとって、危機管理・BCPは「サスティナビリティ」の一環であり、以下の表に示されるように、価値創造の領域として、その重要性を増しています。
●BCP活用領域における戦略的価値と価値創造の関係性
2027年度から、SSBJ基準によるサスティナビリティ情報の制度開示が義務化されますが、気候変動リスク(TCFD、Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)と危機管理は重要な開示項目として設定されています。
近年の企業環境においては、以下のような複合的で予測困難なリスクが増加し、これらは単独ではなく連鎖的に同時発生することも多く、従来型のBCPでは対応が困難とされています。そのため、複合災害発生時にも中核事業を維持し、迅速な復旧を可能にするための手段、戦略が求められてきました。
こうした状況において注目されているのが、オールハザード型BCPと呼ばれる、新たな考え方にもとづくBCPです。
一般に、オールハザード型BCPとは、特定の災害やリスクに限定せず、あらゆる種類の災害や脅威に対応できるように設計されたBCPを言います。つまり、従来の「震災対応BCP」や「水害対応BCP」「感染症対応BCP」という個別リスクに特化した計画ではなく、共通かつ標準化されたフレームワーク(例えば「初動」「情報収集」「意思決定」「復旧」)を設定し、柔軟な対応力を重視するアプローチであり、複合的で、想定外のリスクに対応すべく考えられたBCP設計です。
企業リソース視点として、それぞれのリソースの被災状況を結果ベースとして捉え、その際の事業影響度を分析・評価し、対応策を講じるものです。
●企業リソース視点によるオールハザード型BCP
このオールハザード型BCPの実装には、次のようなステップを実行します。
2025年現在、BCP策定済みの上場企業は、上場企業全体の63パーセント(東京商工会議所2025年8月調査)とされています。うちオールハザード型を採用している企業は、BCP策定企業全体の15~18パーセントと、いまだ多くの企業では個別リスクとして特定災害を想定したBCPを運用しています。これに対しさまざまなシンクタンクが、今後の企業のレジリエンス強化にはオールハザード型BCPが不可欠とし、今後の普及が望まれています。
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