2014/07/25
災害時情報書き消しボード 活用例
傷病者の容態や被害状況などを整理

元東京都総合防災部担当課長の齋藤實氏が発案した「災害時情報書き消しボード」は、地図や建物の配置図、被害状況集計表などを、3M社の特殊フィルム加工を施しAゼロ版(1189×841mm)に出力したもので、ホワイトボードのように、書いたり消したりできる。今号では、日本赤十字社東京支部(東京都新宿区)の活用方法を取材しました。
情報書き消しボードの詳細はこちら→http://www.risktaisaku.com/articles/-/690
6月27日、日赤東京都支部が行った「災害救護基礎訓練」には、武蔵野赤十字病院、大森赤十字病院、葛飾赤十字産院と血液センターなどから事務職員を中心に25人が参加しました。災害救護実施対策本部の指示のもと、応急救護所を設置し対応に当たり、傷病者の状態の記録や位置情報の整理に「災害時情報書き消しボード」を使用しました。
日赤東京都支部・救護係長の齊藤紀彦氏は「日本赤十字の職員であれば医療スタッフでなくとも災害時には救護活動が求められます。今回の参加者の多くは事務スタッフです」と説明します。救護訓練を受けるのは医者や看護師だけではありません。事務スタッフも、災害救護基礎訓練として救護所の設置からトリアージ、応急手当、負傷者の搬送方法や無線通信の使い方、炊き出しなどの救護基礎知識と技術を4日間にわたって学んできました。6月27日は、その最終日です。しかし、齊藤氏は「あくまでも救護対応のスタートライン」と厳しい言葉を発します。
訓練の想定は、東京湾北部を震源とするM7.3、震度6強の地震が発生したというもの。災害救護実施対策本部から無線で救護所設置の指令が出ると10数人でテントを組み立て、簡易ベッドを並べます。しばらくすると、災害救護実施対策本部より「大久保小学校に10人の負傷者がいる」と連絡が入りました。連絡を受け、リーダーの指示で看護師が駆けつけ、トリアージを開始。意識のない人や、頭部や足を負傷している人も倒れています。「トリアージ結果、赤3人います」と救護所に報告を入れると、救護所からは担架が運ばれてきました。
負傷者が担ぎ込まれた救護所では看護師が重傷者の対応に当たりました。「時刻」「氏名」「性別」「年齢」「傷病」「処置内容」などの記入欄がプリントされた「書き消しボード」には、負傷者のトリアージカテゴリーや名前とともに、「恥骨骨折」「呼吸10、脈60」といった症状が傷病欄に書き込まれました。負傷者の状態は書き消しボードを見るだけで確認できるようになっていきました。
救護所には、災害救護実施対策本部から負傷者が集まっている場所や各病院の状況などの情報が続々と寄せられました。救助ヘリの着陸ポイントの確認要請が入ると「書き消しボード」の地図にチェックしていきます。救護所の設置からトリアージ、患者の搬送、傷の手当など一連の救護訓練は1時間を越えました。
救護活動には完全な正解はないと日赤東京都支部の齊藤氏は指摘します。
「派遣の現場ごとに利用できる資材や機材が異なり、ロケーションやシチュエーションも違います。状況に合わせて対応するしかなく、自ら考えて動くのが救護の第一歩。対応力を養って欲しい」(齊藤氏)。
常備救護班に登録されるには、さらなるフォローアップを行い初動対応や救護車両の運転などの訓練を重ねることが必要になります。
日赤の救護班は、東日本大震災や昨年の伊豆大島土砂災害にも現地に派遣されました。救護班の基本構成は医師1名、看護師3名と事務管理などの業務につく主事とよばれる2名を含めた6人体制です。日赤東京都支部には各医療機関に、合わせて20の常備救護班が置かれています。
- keyword
- 災害時情報書き消しボード 活用例
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方