合意形成を最も妨げるのは資金問題 
このような合意形成に支障を生じた事例をよく確認すると、資金問題がネックになっている事例が多い。地震等により生活に支障が出ている状態において、自らの財産上の制約を考慮しながら、ぎりぎりの交渉を続けて、1の復旧に向けた方針を作り上げていくのは被災者にとって非常に重い負担になる。また、建設後被災まで間がなく、修繕・積立金の備えが十分ではない組合においては、より合意形成に大きな問題が生じる。 

このような状態を回避するための1つの方策として地震保険への加入がある。地震保険は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による損害を補償する専用の保険であり、加入に当たっては火災保険への加入が必要になる。また、この保険は、民間の損害保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を国が再保険することで支払力が担保されている。 

よく「私は地震保険をかけています」という話を聞くが、それは各区分所有者が住居として使用している専有部分を対象としたもので、それより外側の躯体部分やエントランスエレベータ等といった共用部が検討されていないことが少なくない。専有部分はそれぞれの区分所有者もしくは居住者が地震保険を手配するが、共用部分はマンションの管理組合がそれぞれ火災保険や地震保険を手配する必要がある。 

この管理組合による地震保険の加入は、被災後にもマンションでの生活を継続するための資金的な備えとして非常に重要である。先に紹介したマンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎの調査においても、地震保険の加入を強く推奨していることは心に留めておきたい。 

次回は、今回紹介した状況を踏まえ、マンション管理組合におけるBCP策定の具体的手法を紹介する。

(了)

(注)この記事には、マンション管理組合の地震災害への対応に当たっての事象の1つとして、マンション管理組合と地震保険に関する記述が含まれています。筆者及び筆者が所属する株式会社インターリスク総研は、法令上地震保険への加入を勧誘する法的地位を有しておらず、これらの記述は地震保険への加入を勧誘する趣旨ではありません。地震保険に関する詳細は、損害保険代理店もしくは損害保険会社にご照会ください。